肯定からあなたの物語は始まる 視点が変わるヒント / 著者・稲葉俊郎 / 講談社
いのちに灯す
最近息子とよく走る。僕がジョギング程度だけれど、3歳の彼にとってはランニングからダッシュに近い形だ。無尽蔵の体力があるのか、途中1分ほどの小休憩を挟むものの、30分程度同じペースで走り、家に帰る直前の一本道の農道を「よーい、ドンっ!」の掛け声と共にダッシュで競争を試みる。よくもまあ、こんなにも走ることができるものだなと感心しつつ、彼の瞳を覗き込むとこんなにも瞳というものはキラキラするものなのだろうかと思ってしまうほど輝いているのだ。まさにそれがいのちに火を灯すということなのかもしれない。
さて本書『肯定からあなたの物語は始まる 視点が変わるヒント』は息子にとっての走ること、体を動かすことよろしく、まさしくそんな火種をあなたのこころに届けてくれるような一冊だ。
「上司のひと言をさらっと聞き流せない」「ゆらいでしまう自分でなくなりたい」「気づけば自己否定の穴に落ち……」――。著者の稲葉俊郎さんは、こうした状態なら「いのちの泉が枯れている」場合が多いという。
生きにくさや不安さえも豊かさに変えられるのが「いのちの力」。いのちの力が強まったとき、悩みは成長の糧になるそう。いのちの力を強めるためのウェルビーイング(個人も社会もよい状態)の活動を行っている稲葉さんは、西洋医学だけではなく伝統医療や心理学など幅広く修めてきた医師からの視点をまとめた一冊。
現代美術家の横尾忠則さんもこの本書について「死んでからでは遅い。生きているうちに気づかなきゃ!」と語る。
治療現場や旅先での出会い、温泉、演劇、アート、本などを通して、いのちという視座を自然に気づかせてくれるかけがえのない一冊。
<目次>
はじめに ~いのちはゆらぎに包まれている
【第1章】よみがえる力
肯定からあなたの物語は始まる
願いのかなえ方
心の間合い
病気学から健康学へ
消費者から創造者へ
【第2章】はなれる力
聞き手になる
どこを通っても道はつながる
解毒する
「きれい」のものさし
【第3章】ひとことの力
体と言葉
「なおす」と「なおる」
主語と目的語を入れかえる
いのちの糸
人生はすべての瞬間が始まり
あなたの中の子どもが走り出す
苦しみを分かちあう
【第4章】たましいの力
馬に乗る
こどもと もとこども
心の井戸を覗く
水と太極
いのちは沈黙の中で叫ぶ
たましいに入り込む
稲葉俊郎
医師、医学博士。慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科(SDM) 特任教授。1979年、熊本生まれ。2014年、東京大学大学院医学系研究科内科学専攻博士課程修了。循環器内科医となり東京大学医学部附属病院に2020年まで勤務。軽井沢病院病院長を経て2024年から現職。西洋医学だけではなく伝統医療、補完代替医療、民間医療も広く修め、医療と芸術、福祉など他分野との間に橋を架ける活動にも従事。2020年より東北芸術工科大学客員教授に就き、3回山形ビエンナーレの芸術監督を務める。「いのちを呼びさます場」として、湯治、芸術、音楽、物語、対話などが融合したウェルビーイングの場の研究と実践に関わる。


