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誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~

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誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~ / 著者・東出昌大 / 扶桑社




有り難さを生きる




信州・上田に移住をしてきて早5年。この歳月を振り返るとさまざまなことがあった。お店を開業したり、子どもが生まれたり、畑も始めたり、新居に越し、そして田んぼもはじめた。それは遠い昔から決まっていたかのように、毎年そのピースが自分の人生のノートにピタッとハマっていくようで、なんだか不思議な心持ちだ。

そんな巡り巡る月日の中で感じることが、「有難い」と思う瞬間が東京で生活していた頃に比べて格段に増えたことなのではないだろうか。自然農で野菜やお米を収穫できた時の喜びはもちろんのこと、意外に収穫時よりも発芽した時の方が喜びは大きいということも数々の実践の中で実感していることだ。

有る(在る)ことが難しい、この感覚は自然の中でいのちと向き合う総量が多ければ多いほど、出会う機会も必然に多くなる。それと同時にどれもが同じいのちでその中の優劣はないということにも気がついてくるはずだろう。

こうしたことに気がつく人生か、通り過ぎてしまう人生かで、だいぶその様相は変わってくるはずだ。まさしくそれこそが「有り難い」のかもしれない。


さて、こんな気持ちを振り返るきっかけになったのが、本書『誰が為にか書く~東京から離れた山暮らし日記~』だ。2021年春、本書の著者で俳優の東出昌大さんは東京を離れ、半自給自足の山暮らしを始めた。

自ら山に入り、鹿を撃つ。仕留めた獣を捌き、その命を食らう。薪を割り、火を焚き、自然の恵みと厳しさを肌で知る。やがて、そこで家族との暮らしが始まる。そして、いつしか山が「地元」になっていく。

狩猟とは何か。いのちを食べるとはどういうことか。都会の常識と山の常識、便利さと豊かさ、善と悪、そして家族を持つということ。山での日常を綴った東出さんの文章は、当たり前だと思っていた現代人の価値観を静かに揺さぶっていく。

猟師として山で暮らす氏のその日常で起きた出来事と、そこから生まれた思索を綴った24編。


狩猟や田舎暮らしの魅力を語る単純な本ではない。

「生きる力とは何か」「豊かさとは何か」を、山暮らしから問い直すエッセイ集。



<目次>

一章 鹿を撃つ(ものさし;“害獣” ほか)

二章 熊を追う(熊について;熊追う日々 ほか)

三章 猿を抱く(自然;タクヤ ほか)

四章 人と生きる(入渓;雷親父 ほか)



東出 昌大
1988年、埼玉県生まれ。2004年「第19回メンズノンノ専属モデルオーディション」でグランプリを獲得。2012年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。現在は北関東の山間部で狩猟を行い半自給自足の生活を送る

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