さまざまな空間 / 著者・ジョルジュ・ペレック / 水声社
人が生きた証
文章を書くこと、編集をすることと畑を作ることはどこか近しい感覚がある。
何もない平地に畝を立てそこに何かしらの種を蒔く。するとそこから芽吹き、葉を大きくしていき、茎が伸び、実がなる。何もなかったところに変化が生まれそこに風景や空間が生まれるからだ。そして編集はというとそれが紙媒体なのかウェブかということは関係なく、そこに何も存在していない状態から、何かの火種になるようなキーワードを導き手にストーリーやコンテキストといった流れをどんどんと伸ばしていき、その流れでしか生まれてこなかった決して狙ってはいない言葉の宝がその文脈の先に実るのだ。均一的な連続する中に何か違和感という名の障壁や変化があることで、気づきや発見の種が散りばめられる。それを意味づけしていくということはまさに人間に与えられた役割なのかもしれなく、他の生物にとっては私たちが感じている空間というものは存在しないのかもしれない、なんて夢想してしまうのだ。
さて、小難しいことを言いたくなってしまったのは、本書『さまざまな空間』という一冊を手にしたからだ。
「生きること、それは空間から空間へ、なるべく身体をぶつけないように移動すること」。
これは本書で著者のジョルジュ・ペレックが語った言葉。
哲学的なこんな言葉が生まれた背景には数々のシーンをより具体的に、いやむしろ変態的に言語化、説明した彼の功労ともいうことができる。ページ―ベッド―寝室―アパルトマン……世界―空間。言葉あそび、引用、タイポグラフィを交えながら、日常から想像世界へ、あらゆる空間を「極私的」な物語でしるしづける企てが、やがて読む者の空間へのまなざしをも変える要約困難な一冊。
<目次>
ページ
ベッド
寝室
アパルトマン
集合住宅
通り
地区
街
田舎
国
世界
空間
ペレック,ジョルジュ
1936年、パリに生まれ、1982年、同地に没した。小説家。1966年に、フランソワ・ル・リヨネー、レーモン・クノーなどの率いる実験文学集団「ウリポ」に加わり、言語遊戯的作品の制作を行う。



