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明日も、森のどこかで

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明日も、森のどこかで / 著者・上田大作 / 閑人堂




生きものたちの息遣い




東京から見たら田舎の信州・上田にもちょっとしたショッピングモールやしっかりとした地産地消をモットーにしたスーパーマーケット、手前味噌だが街に本屋がまだあり、シネコンだけでなく100年以上前に建設されたミニシアターだってある。自分はほとんど行かないがチェーンのカフェなどもあったりするので、都市生活者が今までのライフスタイルを維持したまま、田舎街に移住するファーストステップとしてこの地を選ぶには申し分ないはずだ。

その中でも違いとして移住して6年目となって感じるのが、生きものたちの総量だろうか。当たり前なのだが、都市より緑が豊富にあり、生きものたちが身を寄せる隠れ家が至る所にあるからだ。それは見た目だけのことではなく、春夏秋冬で冬になれば虫から動物までも沈黙の時となり、それまでの季節とは明らかな静寂の世界に包まれていくから面白い。

新居に越してしばらくすると、庭先に何やら小動物の“落としもの”が散見された。無理も無い、新参者は我々の方なのだからとやむを得ず渋々とその片付けをしてみても、翌日また同じところに“落としもの”が落ちているのだ。
これも田舎で生きる宿命と受け入れ、その日々を過ごしていたのだが、とある日の晩、床に入ろうと階段を上がったところにある2階の窓から何気なく外を見てみると、今まで見たことも無いようなもふもふとした塊が二頭連なって歩いている姿を見かけた。穴熊だ。“落としもの”の落とし主といえば良いのか、彼らの仕業だと薄々気づいたけれど、ようやく姿を見せた落とし主には不思議と「犯人が来た!」という心境ではなく、「ああ、そうだよね。君たちだよね。」といったような、まだ見ぬ友に出会えた喜びの方がなぜだか上回ってしまったのだった。というのも、その二頭が振り返り何かを促した先に小さな子穴熊がノロノロとついてきた様子が我が家のそれと何ら変わりがない生きものたちの姿だったことに安堵したからなのかもしれない。


前置きが長くなったが、本書『明日も、森のどこかで』はこうした動物たちの様子を丁寧にまとめた一冊だ。写真家の上田大作さんが紡いだ文字を読み進めていくと上質な動物のドキュメント映像を見ているかのような気になってくる。

どこかの森で。森のどこかで。厳しくも美しい野性の日常と、命をつなぐ特別な瞬間が日々繰り返されている。大自然のリズムに溶け込み、徹底的に観察することで見えてきた、多様な生き物たちが織りなす万華鏡のような物語。
真夜中に飛来したシマフクロウとの奇妙な交流。
春の草原でエゾシカの出産に立ち会った日。
雲上の楽園でヒグマの親子と過ごした、忘れられない夏。

北海道の自然を20年にわたって記録してきた写真家による、野生動物の息づかいを感じるエッセイ集。



<目次>

カラー写真集1
真夜中の訪問者
大雪山の親子グマ
四季をめぐる子鹿の旅
六月の森を彩る歌
最後の夏
カラー写真集2
風が連なる湖
森に還るカラフトマス
小さなテントと一匹の蝿
命をつなぐ真昼の狩り
海辺のキツネ



上田大作
1977年、山口県下関市生まれ。会社員を経て2006年から独学で写真を撮りはじめる。北海道の道東地域や大雪山国立公園を主なフィールドとして、年間250日近くキャンピングカーやテントで生活しながら現在まで撮影を続ける。2013年、冬の風蓮湖を取材した作品で田淵行男賞を受賞。2021年、動物カメラマンとして『情熱大陸』(毎日放送)に出演。近年は海外のプロダクションが制作する野生動物のドキュメンタリー番組に携わるなど、映像の世界にも活動の場を広げている。

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