月とコーヒー ノクターン / 著者・吉田篤弘 / 徳間書店
必要にならないもの
面影 book&craftは本屋である、それともインテリアショップである、ともすると展示などをやるギャラリーである。そんな風にご来店いただくタイミングなどでは受け取る印象が変わってくることだろう。はたまた野菜などを売っている時すらもあるので八百屋なのかと思われる時もあるのかもしれない。
それらに共通して言えることは、そのものが生きていくために絶対に必要なものなのかという問いが浮かび上がることだろう。本がなくとも、インテリアがなくとも、ギャラリーがなくとも、どうにかこうにか生きていけるはずだ。野菜は絶対に必要だけれど。
でもこうした生きる上で必ず必要ではないものこそ、人生をより深く味わい深いものに変えていってくれるものだと確信している。だからこそ、面影 book&craftをやっているとも言えるのだ。
本書『月とコーヒー ノクターン』のあとがきで著者の吉田篤弘さんがタイトルの「月とコーヒー」は敢えて対比させた「太陽とパン」と比べたら生きていくためには後者が必要で前者はなくてもどうにか過ごせると書いていた。そしてこう続けている。
「この世から月とコーヒーがなくなってしまったら、なんと味気なくつまらないことでしょう。生きていくために必要なものではないかもしれないけれど、日常を繰り返していくためになくてはならないもの、そうしたものが、皆、それぞれにあるように思います」と。
この文を読んだ時にまさしく面影 book&craftなのだと感じ、少し勇気付けられたのだった。
本書『月とコーヒー ノクターン』は著者・吉田篤弘さんの人気シリーズ「月とコーヒー」の第三弾。
1話の長さは原稿用紙10枚程度。
独立短編集なのでどこから読んでも大丈夫。
手軽に物語を楽しめるスタイルが好評を博し、2019目の刊行以来、大ロングセラーとなっている『月とコーヒー』。
人気作家・吉田篤弘さんが紡ぐとっておきの物語たちが一冊に。
◎水面の月に思いを馳せる小さな猿。
◎種も仕掛けもない手品をするマジシャン。
◎極上の〈葡萄パン〉と、〈耳の絵〉を描く母と娘。
◎道に迷った賢いアシスタント・ロボット。
◎〈棒パン〉とバリトン先生のとうもろこしスープ。
◎〈黒いコーヒー〉と、おしゃべりな腕時計。
◎〈駄菓子の都〉に跋扈する小悪魔のささやき。
この空の下で泣いている
すべての人たちに──
やさしい子守唄と
あたたかいコーヒーを。


