みどりのみち ひかりのはな / 著者・勝本みつる / エクリ
小さな見えない世界
日々ニュースを見ていると、どこかの国の権力者がやいのやいのと他の国にちょっかいを出し、それによって世界中の均衡が保たれていた秩序が崩壊し、今までの当たり前が当たり前として成立しなくなってきていたりするのを見かける。もちろんその影響というものは私たちの日常生活に影響が出てくるものなのだが、季節や自然に寄り添いながら生活を営んでいると、どこかそれは自分たちの生活の連続性の中では異なる世界の事情と思えて仕方がないのだ。
どんな世界的なことが起こったとて、春になれば桜は咲くし、梅雨前後になれは梅の実は実る。冬の寒さで枯れ果てた大地の草や木々の葉たちは、気づいた時にはみどりが隆盛し、茶枯れた姿はもはや想像してもしきれない。季節や自然は待ってくれないのだ。彼らには彼らなりの秩序が存在し、我々のそれとは別の次元での世界が存在しているということを認めざるを得ない。
美術家の勝本みつるさんの作品や著書を見ていると、こうした自然の中の見えない世界というものはこうした世界なのではと可視化してくれているようでとても面白い。氏のアート作品は古い図鑑や雑誌の写真、使われなくなった道具などを使ってブリコラージュさせて、思いがけない装いを創ることに長けている。本書『みどりのみち ひかりのはな』もこうした手法を取り入れて独特の世界観を表現している。シュルレアリスムの巨匠のルネ・マグリットの作り出す世界観とも共通しており、現実世界に生きている私たちを別の次元へと導いてくれるのだ。
聞くに本書の発案は出版社の間で十数年もの間、考えられてきたものだというから驚きだ。ページを捲り、作品の合間に認められている言葉や文章も直接的には意味をなさない、ある種、詩に似た様相を呈してるけれど、何度も噛み締めてみるとじんわりと穏やかに私たちのこころの扉を開放へと導いてくれることだろう。
本書をしっかりと味わえば、私たちの身の回りの小さな出来事にも礼賛でき、そしてそこにこころを寄せることが何よりの幸せなのだと感じることだろう。
制作・文:勝本みつる
撮影:松浦文生
デザイン:須山悠里
発行:エクリ
判型:A5判型(縦207mm × 横144mm)
ページ数:96ページ(うちカラー88ページ)
仮フランス装・表紙活版刷・スリーブ入り
勝本みつる
美術家、滋賀県生まれ。
古い印刷物、時を経て使われなくなった道具、布や毛皮や箱などを素材に、オブジェ、コラージュ、アッサンブラージュを制作。書籍の装画の仕事も多い。
作品集に『study in green 緑色の研究』(月兎社、2008)などがある。






