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空間の詩人 篠原一男

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空間の詩人 篠原一男 / 著者・奥山信一 / 彰国社




言葉と建築




ここ2、3年で建築関係の仕事がだいぶ増えてきたように思う。と言っても自分は建築家でもましてや工務店や大工の類ではない。今更それらを目指そうなら相当な努力が必要だということは言わずもがなだ。増えた仕事はそれらに従事している内容をまとめたり、コンセプトワークをさせてもらったりと、空間経験を形にしていったり、全体感でどう建築というものを捉えていくかというような節があるような仕事だ。もちろんその業界にいないものだから、専門的な内容を学んだとて、職人やそれを本望で行なっている方たちと比べてしまえば太刀打ちできない。でも素人の自分だからこそ気が付くことだったり、健全な違和感を端緒に言葉を紡いでいくのが性に合っているのか、そうした建築、空間などが絡んだ依頼が増えてきてとても嬉しい限りだ。

こうした経験を踏まえて感じていることなのだが、こうした言葉を紡いで視覚的に形あるものにしていく行為と実際に建物や空間をコンストラクトしていくことにはとても共通点がある気がする。細かなところを挙げていけばキリがない気がするのだが、一つは制約があるということ、そして収まるところ収まるということだろうか。立ち行かなくなる制約も一旦落ち着いて考えてみると、意外なところに突破口があったりしてそれが結果として“味”となって現れてくるのだ。


さて、なぜこんな言葉と建築の共通項を考えているのかというと、この一冊『空間の詩人』を手にしたからだ。先鋭的な住宅作品と言説で20世紀後期の日本建築界を牽引した建築家・篠原一男にフォーカスを当て彼が生前に残した言葉や作品を通してこれからの建築を考えていけるような内容の一冊に仕上がっている。

詩的なニュアンスを建築に組み込むことを得意とした篠原氏は、谷川俊太郎など著名な詩人の自宅を手がけるなど交流も深かったそう。そうしたこともあり、建築界での評価や現状を表した言葉と、自身が追い求める世界観での言葉の狭間で揺れ動きながら建築として表現していたのだと字面を追うごとに考えさせられる。



言説と空間を独自の方法で並走した〈空間の詩人・篠原一男〉を読み解く一冊。


<目次>

Ⅰ 言葉と空間

住宅論と都市論の間に

扇動と宣言――書くことの意味


Ⅱ 時間と構造

デザインゲームにリセットボタンは存在しない

知覚としての構造――「透明な構造」を読み解くヒント


Ⅲ 仮構と構想

知性の交感―多木浩二との必然的な出会い

原型住宅の意味――〈分割〉〈非分割〉そして〈連結〉へ


Ⅳ 詩の建築/建築の詩

性能評価の標的となった住宅――〈谷川俊太郎さんの家〉

一枚のスケッチと詩篇――〈谷川さんの住宅〉

美しい共犯関係―住宅と詩をめぐる〈形式〉と〈内容〉


Ⅴ 夢の眼差し

〈百年記念館〉への道のり

装飾か 抽象か――篠原遺伝子を内包したカプセル〈から傘の家〉


君は篠原一男のように生きているか―あとがきに代えて



奥山信一

東京工業大学 環境・社会理工学院建築学系 教授、「現代日本建築家の創作論に関する研究」にて工学博士、早稲田大学芸術学校非常勤講師。

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