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ブドウ畑の傍らで暮らす

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ブドウ畑の傍らで暮らす / 著者・玉村豊男 / 晶文社




自らが善しとする生き方





葡萄と言ったら、巨峰だ。今時の方なら「やれ、シャインマスカット」だの、「いや、ナガノパーブル」だろという意見がありそうだが、僕は自分の中では未だに巨峰だと思う。
というのもこうした今の流行りのシャインマスカットやナガノパープルが市場に出回る前の主流は巨峰一択で、小さい頃から東京の実家には信州・上田に住む祖父母から毎年秋になれば箱で巨峰が贈られてきたのだった。数十年後にまさか自分がそんな産地に住まいを構えるとは露知らず、秋の時期は貪るように贈られた巨峰を腹一杯食べたのだ。

そんな巨峰を食べて育った僕が信州・上田に移住をして庭先で葡萄を育てている。育てているといっても買ってきたデラウエアの苗を植えてひと冬越し二年目を迎えた夏、今の所無事に実りをつけている。あれ、巨峰じゃないのか?という声が聞こえてきそうだが、作るのがわりかし容易なデラウエアを選んだという至極単純なことなのだ。風通しよくするために葡萄の木の周りの草は定期的に刈るものの、それ以外は葡萄農家さんたちには笑われてしまうような仕立てと管理なのだが、結構たわわに実っているのだ。それほどこのあたりの土地は葡萄の産地なだけあって作物との相性が抜群なのかもしれない。


信州・上田に住んでいて聞いたことはないであろう、隣町の東御市でワイナリーとレストラン『ヴィラデスト ガーデンファームアンドワイナリー』。エッセイストで画家の玉村豊男さんが立ち上げたワイナリーだ。ワイナリーを開き、千曲川ワインバレーの発展を見つめてきた玉村さんが、ワインづくり、農業、土地、食卓、そして人生後半の生き方を語るのが本書『ブドウ畑の傍らで暮らす』だ。

利益や名声のためではなく、自分の望む暮らしを実現するためにブドウを育て、ワインを造る人びと。小規模ワイナリーに挑むパイオニアたちの姿を通して、ワインが土地の個性を映し出すこと、農業が暮らしを支えること、好きなことに熱中できる幸福が描かれる。ワインを愛する人はもちろん、移住、田園回帰、これからの働き方に関心をもつすべての人に贈る、味わい豊かなエッセイ。


都市を離れ、ブドウ畑の傍らで暮らす――。


玉村さんはこうした生き方を自分自身で善しとして突き進んでこられた。

本書からはそうした強い意志を感じるとともに、あなたは何を善しとして生きていくのか、と優しく問いかけられているような気持ちになってくる。


都市がいいやら田舎がいいやら、意見は様々だと思うが、自分が善しとする生き方をぜひ見つめてもらいたい。


<目次>


窓から見えるワインの畑

ワインバレーとワインアカデミー

新しい世界観

ライフスタイラーの誕生

パイオニアたちの未来

医者よりワインが大事な理由

好きなことに熱中できる幸福


ワインに優劣はない

ワインづくりは農家の仕事

ワインはその土地の個性を表現する

ヴィンテージはその年の思い出


ワインは世界のどこでもできる

熱帯でワインを造る

新緯度帯のワイン

北海道から沖縄まで


column ノアの方舟がアララト山に漂着した理由


その土地でできる酒を飲む

「酒」とだけ言えば酒が出てきた時代

日本酒とワインの文法

マリアージュ神話の誕生


飲むためのワインと売るためのワイン

フランス農民が飲んでいたワインもどき

ローマ帝国の経済基盤

中世のワインブーム

売るためのワイン造り

鉄道が変えたワイン地図


ワインはライフスタイル

ソムリエは宮中晩餐会

酔っ払ってはいけない酒

食中酒の意味

アペロの時間


column 自然なワイン不自然なワイン


ワイナリーオーナーという生活

小規模ワイナリーの経済学

農業は拡大ではなく持続をめざす

産業革命以前の暮らし


新しい投資の視点

投資家が求めるもの

自分にできないことを応援する

一歩進めば景色が変わる


流通から旅行へ

農業をベースにしたライフスタイル

百年後の産業革命

人口減少時代の田園回帰


column 地球温暖化とワインの未来


おわりに――ブドウ畑は誰のもの



玉村豊男
エッセイスト・画家。1945年東京都生まれ。東京大学文学部仏文学科卒。パリ大学留学。長野県東御市にて、2003年「ヴィラデスト ガーデンファームアンド ワイナリー」、2015年「アルカンヴィーニュ/ 千曲川ワインアカデミー」を設立。著書には、『料理の四面体』『食の地平線』『玉村豊男 パリ1968-2010』『ヴィラデストの厨房から』『今日よりよい明日はない』『絵を描く日常』『旅する人』『花摘む人』『ぼくのワインができるまで』『玉村豊男のコラム日記』、翻訳『美味礼讃』(ブリア=サヴァラン)ほか多数。画集には『HARVEST』『GARDENS』『PARIS パリの美しい9月』『ヴィラデスト 里山の花暦』 ほかがある。

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