人生は選択でできている / 著者・猫沢エミ / KADOKAWA
選択の後押し
大学時代の卒業式はなかった。正確には卒業証書は受領したけれど、東日本大震災の直後だったため、余震などが続く中でのセレモニーは危険との学校側の判断により中止となった。中学、高校、大学と係属校での進学だったために卒業式らしい卒業式は小学校まで遡らないと僕の人生のページには描かれていない。
そんな中、ゼミの先生や後輩の計らいで目白のリーガロイヤルホテルでゼミとしての卒業パーティーを開催してくれた。最後に卒業生からそれぞれ一言ずつスピーチをする機会が設けられた。自分が何を話したのかということはほとんど覚えていないのだが、ゼミ活動の中で常にふざけ合いをしていた友人のスピーチは今でも覚えている。彼が言ったことは「自分のチョイス(選択)を信じること」ということだった。その時は、そうなのかなといった具合にしか思っていなかったが、人生の半ばまで来てみると大きく頷くより他ない。
会社員という枠組みから離れたこと、フリーランスになったこと、結婚したこと、移住をしたこと、お店を開業したこと、挙げればキリがないのだが全てにおいて自分の選択を信じて進んできたことなのだ。
さて、そんなことを思い出したのは本書『人生は選択でできている』を読んだことがきっかけだった。渋谷系全盛期にシンガーソングライターとしてデビュー。その後、愛猫とともにパリに一度目の移住でフランス語を学び始める。その間、フランスの輸入バイクの会社を営む。一度日本へ帰国して、フランスに関するフリーペーパーの編集長やフランス語教室を主宰するかたわら、エッセイストとして本を執筆する。2022年に再度フランスに渡り、フランス人アーティストのパートナーとともに二度目のパリ生活中、という人生を歩んでいる著者の猫沢エミさんの完全書き下ろしエッセイ。
職業も住む場所も多岐にわたり、いくつもの顔を持つ猫沢エミさん。それはターニングポイントを迎えるたびに、ある基準で人生を選んできた結果だと振り返る。
音楽業界の不況や、仕事の不調、愛猫の病気、親との関係など、さまざまな困難がふりかかってきたときに、どういう選択をし、心を落ち着かせてきたのか。
50歳という人生の折り返しからは、「私の人生これでいいの?」「平凡でつまらない人生だった」と過去のことを後悔したり、やり残したことをくやんだりする人が多いもの。
選択の価値は今考えることができるけれど、その選択の意味は、その選択を信じ動いたあとに振り返って見出されるものなのだと猫沢さんのエピソードを読んで実感している。
そんな方にぜひ読んでもらいたい、人生に希望が見えてくる1冊。
<目次>
1章 仕事とお金の選択
2章 人間関係と恋愛の選択
3章 暮らしの選択
4章 心の選択
猫沢エミ
1970年福島県生まれ。5歳からクラシック音楽に親しみ、高校卒業後は音楽大学に入学。打楽器を専門に学ぶ。卒業後シンガーソングライターとしてメジャーデビューし、雑誌やテレビなどで活躍。2002年、一度目のフランス移住。2007年より10年間フリーペーパー『BONZOUR JAPON』の編集長を務める。帰国後、超実践型フランス語教室「にゃんフラ」を主宰。2022年、2匹の猫を連れて、ふたたびパリに居をかまえ、現在もインターネット上でフランス語教室を続けながら、執筆を中心に活動を続けている。


