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宮沢賢治の動物誌

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宮沢賢治動物 / 著者・神田彩絵 / 青弓社



文学から動物に近づく


 

宮沢賢治の作品といえば、『注文の多い料理店』や『セロ弾きのゴーシュ』など作中に動物が出てくることが多い。


本書は日本近現代文学を専攻する著者が、宮沢賢治作品の中に登場する動物を丁寧に分解、分析し、賢治が生きた明治期という西洋文化が流入してきた時代の動物観の移り変わりを捉えながら、イーハトーブ童話のファンタジー世界を旅していくという異色の一冊。


動物の本といいながら生態学的な紹介は少なめに、古今東西様々な文献のテキストが引用されていたり、歴史や民俗学の話が登場したりと文学専攻の著者らしいアプローチで、いわゆる「うんちく」好きにはたまらない読み応えかもしれない。


フクロウやクマ、キツネ、といった私たちに馴染みのある動物たちも、この本にかかればたくさんの側面が見えてきて、次第に一つのキャラクターが出来上がってくる。

生物個体としての動物ではなく、まるで一人の人間かのような愛着まで彼らに湧いてくるようで、なんだか他人事ではなくなってくるのである。


そう、動物たちの世界も私たち人間世界と地続きなのだ。

もっともっと動物に関心を持ちたくなる、そんな気づきを与えてくれる一冊。




<目次>

まえがき――イーハトーブ童話のキーアニマルたち


第1章 フクロウ――鳥社会の日陰者

 1 見た目は賢く、視野は狭い

 2 失われた神性

 3 境界を超える鳥、嫌われるフクロウ

 4 悪禽のワケ

 5 フクロウと月と罪


第2章 クマ――唯一の対抗者

 1 恐ろしさと愛らしさ

 2 愛嬌の移入

 3 タブーとマタギ

 4 信仰から管理へ

 5 拮抗する力


第3章 キツネ――本能にあらがう嘘つき

 1 キツネを愛しすぎる日本人

 2 陰陽五行説と狐信仰

 3 お稲荷さんではない

 4 化かすキツネと化かさないキツネ

 5 新時代の到来と世代交代

 6 だます本能を克服せよ


第4章 タヌキ――私腹を肥やす横着者

 1 日本の特産種

 2 キツネ以外の化かすもの

 3 キツネとキャラ被り

 4 無限に膨らむ腹

 5 待ち構えるから、目立たない


第5章 ネズミ――小さな簒奪者

 1 注目されつづける動物

 2 〈小〉ざかしい弱者

 3 家ネズミと野ネズミ

 4 病原菌の媒介者


第6章 アリ――近代社会の代表者

 1 小さき他者、信用される目

 2 太陽コンパスの発見

 3 アリ学の発展と兵隊イメージの定着


第7章 カエル――迫害される芸術家

 1 岩手県の夏と繁殖期

 2 避けられたヒキガエル

 3 醜い嫌われ者

 4 陰を代表する虫

 5 独自の視点で世界を見る


第8章 ネコ――世界を泳ぐ自由なもの

 1 山猫と飼いネコ

 2 狡猾と学問的優秀性

 3 生物からの解放

 4 風から生まれ、風に帰る


読書案内


あとがき――レイヤーとしての動物



神田彩絵
1996年、東京都生まれ。東京女子大学大学院人間科学研究科博士前期課程修了。専攻は日本近現代文学。論文に「宮沢賢治童話における〈クマ〉――他者として描くこと」(「東京女子大学日本文学」第118)など。渋谷区立宮下公園で開催されたWedding Park 2100Parkになろう」(2023)でエッセー「豊かさは繋がること」を寄稿。


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