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虫眼とアニ眼

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虫眼とアニ眼 / 著者・養老孟司、宮崎駿 / 新潮社



視点で変わる世界



自分が日々手入れをしている畑のご近所さんに80歳を超えるお爺さんがいる。親よりもふた周りほど歳の離れたそのお爺さんは、僕がこの信州・上田に移住をしてから定期的に話をする仲となった。いわば友達ともいうべき関係のようにも思えてくる。

話のはじめこそ、今何を植えたかとか、今年は暑いなとかそんな他愛の無い話をするのだが、そのお爺さんも半世紀ほど離れた自分の子どもよりも下の世代と話をするのが楽しいらしく、今の政治のことやこの集落の過去のこととか、神社にある大きな木、さらにはこれからの生き方や働き方などの話まで広がっていくことがある。

こうしていろいろな話をしていく中で気がつくのだが、不思議と意見の対立などが起きないのだ。仮に親や親の世代の方と世間話レベルで同じテーマの話をしようものなら、真逆の意見が出たり、相容れない分かり合えなさを至る所に感じることだろう。けれどそのお爺さんの頭が柔らかいのか、はたまた世代が一巡して同じ見方なのかわからないけれど、そんな意見の隔たりというものを感じさせないから面白く、大体話が盛り上がり過ぎて終わることができないのがオチなのだ。


本書『虫眼とアニ眼』を読んでいると養老さんと宮崎さんがこのお爺さんに思えて仕方がない。彼らとお爺さんが世代が同じだからなのだろうか、ここに書いてあることが生きるにあたり本質的なことが書いてあるからなのだろうか、不思議とそんなふうに思えてくるのだ。

小さな虫の動きも逃さず捉えて感動できる「虫眼の人」養老孟司と、日本を代表する「アニメ(眼)の人」宮崎駿が、宮崎作品を通して自然と人間のことを考え、若者や子供への思いを語る。自分を好きになろう、人間を好きになろう、自然と生きるものすべてを好きになろうという前向きで感動的な言葉の数々は、時代に流されがちな私たちの胸に真摯に響く。


二人の話のヒントは子どもに視点にある。

なるほど、そうであるならば、お爺さんにとって僕は実の子どもよりも世代が若い子どもなわけだから、僕との会話の中でこの子どもに視点を存分に楽しんでいるのかもれない。

僕も彼らのようなお爺さんになりたいものだ。



<目次>


養老さんと話して、ぼくが思ったこと 宮崎駿


『もののけ姫』の向こうに見えるもの

対談1 1997

みんな「人間嫌い」になっている/あまった「感性」が人間に向いた/生きていくための武装に欠けている/日本は自然に助けられてきた/お先真っ暗だから面白い

対談2 1998

理屈じゃなしに通じる宮崎作品/固定しているものも動いているという意味/ジタバタしているときに立ち込めるエネルギーの匂い/戦争に負けて抵抗の少ないほうへ行った/濡れ場があるとかないとかは最低のこと/混ざって生きていくしか対応しようがない/ブルーカラーがどこかで働いている/あの子を楽しませたい


『千と千尋の神隠し』をめぐって

対談3 2001

「懐かしさ」という感覚をめぐって/日本の建物を描く/言葉と情報/アニメーションはリアリズム/子どもたちの心によりそった映画を作りたい/電車のシーンを描けてよかった


見えない時代を生き抜く――宮崎アニメ私論 養老孟司


文庫版あとがき 宮崎駿



養老孟司
1937(昭和12)年、鎌倉生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。心の問題や社会現象を、脳科学や解剖学などの知識を交えながら解説し、多くの読者を得た。1989(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』は大ヒットし2003年のベストセラー第1位、また新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞した。大の虫好きとして知られ、昆虫採集・標本作成を続けている。『唯脳論』『身体の文学史』『手入れという思想』『遺言。』『半分生きて、半分死んでいる』など著書多数。


宮崎駿
1941(昭和16)年東京都生れ。学習院大学卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。日本アニメーションなどを経て、スタジオジブリ設立に参加。作品に『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』など。

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