かたちのない民藝をもとめて / 著者・表萌々花 / 作品社
日常の息遣い
クラフトや民藝という言葉がもてはやされて久しい。そんな中、これクラフトか?民藝か?と思いたくなるような手で作られたものまでそうした言葉で括られていることが多くなり、もはやこのキーワードを出したら負け、そんな雰囲気すらあるのではないだろうか。
そんな背景もありつつ、面影 book&craftが立ち上げたプロジェクトが「THE GARDEN」だった。ただ創っている方たちのプロダクトなどを表に出すのではなく、そうしたものは日常の延長線上にあり、生きる活動つまるところ生活の積み重なりの中から生み出されたものこそが、クラフトや民藝という言葉に値するのではないだろうかという仮説に基づいているのだ。生活の中で何を大切にしているかという美意識を最終的にはまとめていこうと思っている。
そんなプロジェクトを立ち上げた時に、たまたま手にした本書『かたちのない民藝をもとめて』だった。海外でのボランティア活動をきっかけに写真を撮り始めた著者の表萌々花さん。彼女が世界中を駆け回り旅をしながら、未だ形にすらなっていないそこで息づく人々の観念や想念のような無意識的な体験を丁寧に掬い上げている。本書を読み進めてみると、民藝の「藝」の字の語源が、農作業をしている人の形を模していることにも分かるように、本来のものは売るためのものではなく、生活の術や知恵が形となって現れてきたものなのだということを実感させてくれるはずだ。
訪れた土地の民藝品や手しごとの源流をたどるなかで触れた人々の祈りや想いを綴った、約十年の旅の記録。
ものを創る方、そうではない方、全ての方々に手に取ってもらいたい一冊。
<目次>
はじめに
1 メキシコ
2 ベトナム
3 モロッコ
4 エチオピア
5 旅のはじまり
おわりに
表萌々花
1998年岐阜県生まれ。海外でのボランティア活動をきっかけに、写真を撮るようになる。帰国後アシスタントを経て独立。訪れた土地の持つ空気感や風土、時に厳しい現実や死生観を感じさせる作品を発表している。写真集に『沈黙の塔』(2025年)、『traverse(r)』(2024年)、『星霜』(2022年)がある。


