In Modest Blue / 作者・nakaban / elvispress
記憶の風景
海外の真夜中の独り歩きは危ない。日本とはやっぱり違うのでそれもそのはず。
だからなのだけれど、そんな状況に陥るとスリリングではある。
あるコペンハーゲンでの旅の時、お隣の国のスウェーデンのマルメにいるデザイナーの友人宅のホームパーティーに参加した時。隣の国といっても電車で30分くらいな距離をいいことに、楽しくなってまさかの終電ギリギリで帰ることになってしまった。
けれどその時期は白夜も近づく5月後半ということもあって日は落ちているけれど空はまだ仄かに明るくそこまで暗くて危ないという感じはしなかった。コペンハーゲン中央駅に到着してみると、昼間はターミナル駅で人がごった返しているがそこにはガラんとした世界が広がっていた。Airbnbで借りていた家までの道も昼見ている景色と変わらないはずなのだが、薄暗さと誰一人いない街並みとヨーロッパ特有の建物の存在感が不思議な世界に迷い込んでしまったかのような不安に押しつぶされそうになり、自然と足早になっていった。
さて、nakabanの絵を本書『In Modest Blue』ではじめて見たときに思ったのが、この白夜に近いコペンハーゲンの街並みだった。
旅と記憶を主題とし、絵の中を旅するように風景を描いてきた画家、nakabanによる作品集の本作。
記憶と想像を綯い交ぜにして創造した架空の町「Harlowe Mere」を、nakabanが旅しながら描き留めたペインティング作品を収録した1冊。
旅のはじまりは、駅ーー。
画家は、誰もいない街をさまよい歩いていく。風のように。幽霊のように。
決定的瞬間ではない、普段着の街に出会うため。
人物は描かれていないけれど、あたたかい。知らない街なのに、懐かしい。
地図をたよりに、画家と一緒に歩いていきましょう。
ページを開けば、あなたの記憶の風景が立ち現れてくるだろう。
nakaban
画家|1974年広島県生まれ。広島県在住。
旅と記憶を主題に絵を描く。絵画作品を中心に、印刷物の挿絵、映像作品を発表する傍ら、音楽家のトウヤマタケオと『ランテルナムジカ』を結成し、音楽と幻燈で全国を旅する。2013年には新潮社「とんぼの本」のロゴマークを制作。数多くの絵本を制作する絵本作家でもある。
https://www.nakaban.com






