ふつうの人が小説家として生活していくには / 著者・津村記久子 / 夏葉社
人生を紐解く
たかが40年弱の自分の人生を振り返ると、今の仕事の素質につながる片鱗が子供時代にあったりする。自分はというと、小学校の社会の授業、それも日本史の時の課題である一つの時代について自分で画用紙にまとめるという課題があった。今振り返ってみるとかなりそれはユニークな取り組みで教科書の丸写しはダメ、自分で調べたことも書き加えながらまとめていくというものだった。図書館に行って調べたり、自分なりの観点でその時代の歴史を遡るという面白さにどっぷりとハマった。一つのことを深掘りをしていくという自分の気性にもあっていたのか、少し自慢にはなるが、他の手本として学年の中でも表彰されるくらい綺麗にそして丁寧に、面白くまとめた。何かのテーマを自分なりの視点でまとめていく原体験だ。これはある種の編集行為で今の自分がやっていることに他ならない。その後、キャリアとしては寄り道したりしながら、今ここに辿り着き落ち着くところに落ち着いたということは偶然ではなく、必然だったのだ。
さて、そんなことを想起させてくれたのが、こちらの『ふつうの人が小説家として生活していくには』だ。小説家の津村記久子の幼少期の頃から今に至るまでの記憶について夏葉社の島田さんが丁寧におこなったインタビューをまとめた一冊。ページをめくって読み進めてみると、やはり今につながる過去の出来事や自分でも無意識的に行なっていたことが浮かび上がっているのに気が付くはずだ。好きなこととひたむきに向き合う大切さ、そしてその時は道草を食っているように思えてしまうことでも自ずから然らむように自然と本筋に戻っていっているという人生の不思議さを感じることだろう。
自分の人生についてもそっと振り返ってみたくなるそんな一冊。
小説家に聞いた4 日間。生きるヒントにあふれるインタビュー。
2005年に太宰治賞の受賞作『君は永遠にそいつらより若い』でデビューした津村記久子さんは今年、デビュー20周年を迎えます。休むことなく、『ポトスライムの舟』、『ディス・イズ・ザ・デイ』、『つまらない住宅地のすべての家』、『水車小屋のネネ』などの傑作を発表し続けた作家はどのように暮らし、どのように小説を書いてきたのか? 同世代の編集者が共通の趣味である音楽、サッカーの話をまじえながら、その秘密を根掘り葉掘り聞きました。「オープンソースだけで仕事をしてきた」と語る「ふつうの人」がなぜ、唯一無二の作家となったのかを解き明かす、元気が出て、なにかを書きたくなる、ロング・インタビュー。名言がたくさんです。
津村記久子
大阪市生まれ。小説家。「君は永遠にそいつらより若い」で太宰治賞、「ポトスライムの舟」で芥川賞受賞。


