整体対話読本 表現と体癖 / 著者・川﨑智子、鶴崎いづみ・ほか / 土曜社
素直な体
今の時代、なにかと「表現する」ことを求められる風潮にあるような気がする。
SNSでの発信、様々なコミュニティで行われる人とのコミュニケーション。
表現しないと共感されない、肩書きがないと認識してもらえないー
長いものに巻かれていたり、どこかの組織に所属していれば安泰、といったひと昔前のスタンダードはすっかり崩れ去り、自分の軸を持ち、「わたし」という個の存在で表現することを求められる、そんな時代の入口に私たちは今立っているのだと思います。
「表現する」ってどういうことなのだろう。
本書は野口整体を学び、その後整体指導者として「と整体」を主宰する川﨑智子さんが、2016年から7年にわたり整体の視点から表現物をみることやものの見方などをワークショップ形式で伝える会を開催したときの対話をまとめた記録です。
整体の視点から表現物をみるにあたって関わってくるのが体癖で、体癖とはその人の体の偏りやゆがみからくる人間の感受性の癖を十二種類に分類したものだそう。一人一人の中にある運動のこと。
絵でも立体作品でも表現物を見るとその人が何色を好んでいるのか、どういう線を描くのかなど細かな特徴から体癖の傾向を判別できるし、呼吸器が疲れている、骨盤が開いている、といった身体特性までわかるというから面白い。
あとがきの部分で「表現者になるのではない。表現者が存在しているだけだ。」と述べられているように、表現することは、意図ももちろんするけれど、滲み出てくるもののほうが大きいのではないか。
つい反応してしまうことや、選んでしまうこと、好きと感じること…それをただ素直に出すことが肝心で、周りの目や固定観念といった思考で捻じ曲げてしまうから厄介なことになる。
当たり前のように表現に優劣はなく、評価されることを前提に考えてしまってはそれは自分に嘘をつくことで健全な出力にはならないのだ、と本書を読んでハッと気づかされました。
また、随所に出てくる体癖の傾向についての解説はまるで星占いのお話を聞いているようにわくわくと興味が湧き、体癖についての知識を深めたくなります。
私の体は何種傾向にあるのだろう、観察し、理解することでより私のままでいることをより肯定できるような気がする。
整体に興味のある方、自分の個性について考えたい方、表現について頭を悩ませている方、新しい気づきや学びのある本書からきっとヒントが得られるはずです。
<目次>
表現からみる体癖
絵からみる体癖
連続ワークショップ 表現と体癖
本からみる体癖
川﨑智子
1970年5月5日、宮崎県生まれ。不調をきっかけに出会った野口整体により体の全感覚が一致した自覚が生まれ、自由になる。気を独学。2005年より整体活動開始。整体指導者として、「と整体」を主宰。
鶴崎いづみ
1982年7月8日福岡県生まれ。ものごとをとらえなおす試みをおこなっている。2013年~22年オルタナティブスペース「路地と人」の運営に加わる。14年より観察と編集を基礎として主に出版をおこなう試み「観察と編集」を始める。



