Existence / 著者・黒﨑輝男 / 黒﨑輝男事務所
君ならどう考えるか
会社員時代、会社の同僚と連むことは一切なかった。仕事の延長のような惰性の会話や元々お酒が飲めないこともあり、その時間をどうにか別のことに有効活用したいということもあり、いくつか社会人の学びの場に顔を出すようになった。学生時代は人並み以上に学ぶことに対して好奇心があったものの、社会人になった途端にいままで続いていた学びというものが途絶えてしまった虚無感を今振り返ってみれば穴埋めするような感じだったのかもしれない。
そんな中、学生時代から行き続けていた北欧はスウェーデンについて「クリエイティブ都市学 - ストックホルム編 -」という講義が開催されることをツイッターで知り、よく分からないまま週末のアクティビティのような気持ちで参加することにした。それが自分と自由大学、そして黒﨑輝男さんとの出会いになった。
東京・池尻にあるIID(現home work village)に初回の講義に来た大柄のお洒落な“おじさん”は息継ぎもほぼ無しに2時間近く熱量高く、捲し立てるかのようにクリエイティビティ、デザイン、都市、食、美意識など具体的な話をした。それが黒﨑さんだった。後から分かったことなのだが、講義だからそんな感じだった訳ではなく、それが黒﨑さんの平常運転だったのだ。その時は話を聞いたという印象よりも、勢いのある言葉のシャワーをただひたすら浴びせられたようなそんな感覚だった。後にも先にもあの時を上回るワクワクする体験に出会ったことはない。そこから本当の学びという黒﨑さんが考える思想やその状況が生み出すある種の熱に魅了され、会社を辞め、いつしか自分自身が講義を創り、気づいた時には自由大学の運営ディレクションなども行うようになったのだった。
そんなこんなで会社員という肩書きを外す、3ヶ月前。会社の都合で出社しなければいけない日は、9時から17時までただただネットサーフィンをする他ない状態が続いた。というのも、内々ではもう辞めることが決まっている人に仕事を与えることができず、まだ辞める旨を同僚などに公にできない理由もあり、周りに悟られないようにという上司の命にPCの前で渋々従っていた。
その時にひたすら読み込んでいたのが、黒﨑さんが2007年ごろから執筆していた個人ブログ『KUROTERU BLOG』だった。どういったものの見方で世界を捉えているのか、かつてIDÉEという日本のデザイン界隈を引っ張る存在を創業した氏はどういう人物なのかということをひたすらに自分の頭の中にインストールしたのだった。あの時の講義の中で浴びせられたように、既存の当たり前に疑問を持ち、世界中を旅しながら様々な方たちとの出会いからインスピレーションを受け、状況をデザインしていく実践者でもある黒﨑さんの言葉からは質量や熱がその膨大な量の文章の中にはあり、何というか実にリアルだったのだ。
さて本書は「生活の探求」をテーマに国内外のデザイナーのプロデュースをしてきた「IDÉE」の創業者黒﨑輝男さんが遺した言葉と思想をまとめた一冊だ。僕が当時、穴の開くほど、いや視力を落としてまで読み込んだ『KUROTERU BLOG』をベースにしている。
近年は青山ファーマーズマーケットや自由大学、MIDORI.soなどで都市に場を立ち上げ、石川・滝ヶ原のTAKIGAHARA FARMでは理想郷を作り上げた氏。何を隠そう、面影 book&craftの店主のかつてのボスでもあり、色々なプロジェクトを行ない、一緒に旅をし、様々な視点を学ばせてもらったのだ。
デザイン、建築、農業、地域、食、コミュニティ、平和……暮らしと社会を貫くテーマから、「これからどう生きるか」を問い直す思想集。
本書では、その断片的な言葉を再編集し、現代に生きる人々への静かな指針としてまとめています。黒﨑が問い続けた「人はどう在るべきか」を未来へ手渡すための記録であり、「生き方の編集」を試みた一冊になっている。
ここにはリアルがある。
ここにある言葉を鵜呑みにせず、自分ならどう考えるかを絶えず問い続けて考えてみて欲しい。
かつて、黒﨑さんがそうであったように。
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著者:黒﨑輝男
挿絵:吉田真一郎
編集:九法祟雄
企画:大矢知史/黒崎輝男事務所
デザイン:山本和久 (Donny Grafiks)
発行:黒崎輝男事務所
ページ数:304ページ
言語:日本語













