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芸術の発見 AI時代の生きる条件

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芸術の発見 AI時代の生きる条件 / 著者・岡﨑乾二郎 / フィルムアート社




分かり易さと複雑さ




人間には矛盾もあり正確ではない。そういうことは誰かと会話をしている時に感じる。夫婦であれ、友人であれ、親子であれ、恋人であれ、その時は突然やってくる。先ほどまでの主張は一体どこへ行ってしまったのかと言いたくなるほど、見当違いな行動を突如取ることもある。今流行りのAIなんぞにそんな姿を見られたものならば、人間がバグを起こしたと認識されそうでもある。

けれど会話の矛盾などは感じつつも、人間と人間同士はそうした矛盾を孕んだ複雑さを違いに理解し順応し合うプロセスを自然と身につけているようで、ちょっとやそっとのことでは、突然の争いごとまでにそれが発展することは稀である。

自分が普段から生業にしている編集業でもそういった複雑さに出くわすことは多々あるのだが、それを丁寧に対話を重ねながら絡まった紐を解くように一本の線んいなった時は痛快そのものなのだ。AIにこうした複雑さを理解することはまだ難しい気がする。その複雑さの中に感情=気が入り込んでいることが多いのでそれを間で翻訳するもしくは言語化していく必要があるからだ。

本書『芸術の発見 AI時代の生きる条件』ではこうした間に入る翻訳的な言語化のことを「質の情報」と論じていた。そうしたものを与えないと期待する返答が返ってこないことだろう。良き問いを持つこと、これこそがAI時代に人間が持っておかねばならないスキルの一つなのかもしれない。


さて、本書には、いま発見される芸術、古代の問答術、よく生きることの意味について造形作家で批評家の岡﨑乾二郎さんがまとめた最新の思考集だ。世にはAI終末論的なことが取り沙汰されているがそれに対峙する「希望の書」とでもいえようか。

AIにつまずき、AIをつまずかせる──緊迫の応答、待望の書き下ろし。


日々AIと会話し、ともに何かを生み出すことが日常化した現代。

しかしAIとの会話はときに円滑に進みすぎ、壁打ちに陥ってしまう。

ユーザーとAIの創造的な対話は、いかにすれば可能なのだろうか?

──ここに、創造と対話の源泉への問いが立ち上がってくる。


前著『芸術の設計』におけるノーテーション理論の見直しから、

古代ギリシャの「エートス」概念や問答術、『オイディプス王』、

そしてビートルズのレコードに刻まれた「ランアウト・グルーヴ」まで……

AIとのやりとりから出発した思考は、古今東西の知恵と芸術をめぐる旅を経て、

生成=想起=発見の術に行き着く。


『芸術の設計』から約20年。

AI時代に岡﨑乾二郎が問う、創造と対話の根源とは?

制作と批評を往還してきた著者が放つ、驚きと躓きに満ちた〈発見〉の書。


今の時代、読んでおきたい一冊。



<目次>
目次

プロローグ


第一部 0層のノーテーション──AIとの問答術


I 0層のノーテーション

I-1 AIは教師? あるいは生徒?

I-2 《躓き》

I-3 3層のノーテーション


II 問答

II-1 広島焼きはタコスか、たこ焼きか

II-2 蒸気の発見

II-3 おしゃべりから議論へ

II-4 いすってすてき

II-5 椅子があなたを見つける


III 0層へ向かうエートス

III-1 言葉にならない《質》の探求

III-2 解凍されない回答、その多数性

III-3 「土手」である「銀行」

III-4 観測者 – ユーザー

III-5 制作という持続時間

III-6 何度でも生成する現在


IV 埋め込まれた時間

IV-1 煮立った時間の粒

IV-2 無限に延長される二つの時間の間


インターローグ──リウィア邸の庭園壁画


第二部 遡行的発見──これしかなかった


I 五つの公理と遡行的時間

I-1 タイルの汚れ──余剰

I-2 AIの五つの公理

I-3 相手の話を聞く、無知の知

I-4 オイディプスの必然

I-5 第三の項目としての事物


II 音楽の時間

II-1 録音される場所

II-2 たどり着かない音楽──ワーグナー『パルジファル』

II-3 ア・デイ・イン・ザ・ライフ

II-4 宙吊りされる必然性

II-5 Never could be any other way──これ以外の道なんてなかった


エピローグ──ある日のAIたちとの会話


あとがき

事項索引




岡﨑乾二郎
1955年東京生まれ。造形作家、批評家。

1982年パリ・ビエンナーレに招聘されて以来、国際展を含む多くの展覧会に出品。セゾン現代美術館(2002年)、豊田市美術館(2019 – 20年)、東京都現代美術館(2025年)で大規模な個展を開催。作品制作とともに、美術、建築、思想など多岐にわたる領域で批評・執筆活動を行う。

主な著書に『抽象の力 近代芸術の解析』『感覚のエデン(岡﨑乾二郎批評選集 vol.1)』『而今而後 批評のあとさき(岡﨑乾二郎批評選集 vol.2)』(共に亜紀書房)、『絵画の素 TOPICA PICTUS』(岩波書店)、『頭のうえを何かが』(ナナロク社)、『ルネサンス 経験の条件』(文春学藝ライブラリー)、『芸術の設計』(編著、フィルムアート社)など。作品集として『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』『岡﨑乾二郎 而今而後』(共にナナロク社)など。

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