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風土: 人間学的考察

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風土: 人間学的考察 / 著者・和辻哲郎 / 岩波書店




人間の源泉




木工作家の中沢学さんに最近DVDをお借りした。NHKが出している『人間は何を食べてきたか~食のルーツ・5万キロの旅~』というシリーズドキュメント作品なのだが、食べ物がどこで生まれ、どんな物語を経て、私たちの食卓に上るようになったのかを問う内容なのだが、タイの山岳民族の米、ドイツのソーセージ、砂漠の遊牧民のチーズ、アンデスのジャガイモなど、世界各地を取材し、人々と風土が育んだ食文化にフォーカスを当て、現代人の食生活のあり方を問うている。放送年度が1984年ということで40年以上前に作られたにも関わらず今見るととてもこころに残るというか何かの警笛を感じさせられるものだ。

自分が栽培している我が家のじゃがいもの品種として『アンデスレッド』という赤い皮に覆われたポテトサラダやコロッケに適したじゃがいもがある。まさしくこの『アンデスレッド』の原産地でもあるアンデスの風土にフォーカスを当てた回を見た。標高3000mから4000mほどの山岳地帯で栽培されるそれは、我が家のそれとは比較できないようなとても小さなじゃがいもだった。もしそれが取れたら、残念ながら次の種芋にまわしてしまうか、残念ながら破棄してしまうくらいなものだ。けれど、映像に映る彼らはそれらを潰し乾燥させ越冬するための食糧として貯蔵するとのことだったのだ。栽培中に株下にもっと土寄せをすれば

大きなじゃがいもが採れるのにとも思ったが、環境がそうさせないのかもしれない。彼らは何千年もの間そうやって命を繋いできたのかと思えば豊かな現代人の私たちが何かをいうことはナンセンスなのだと悟ったのだ。


さて本書『風土: 人間学的考察』はこのドキュメンタリー映像と近からず遠からず地域差や環境により人間がどのような社会文化を育み、その土地に根差した精神を宿すのかということが丁寧に分析されている一冊だ。風土とは単なる自然環境ではなくして、人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。先のドキュメンタリーでも示唆されているように人間は環境に適合した性質を育んでいく特性がある。それはつまり文化を作る人間とそれを取り巻く自然が織り成した“内なる自然”が私たちの中で勃興していくような感覚なのだろう。

本書では、こうした観点からモンスーン・沙漠・牧場という自然環境由来の風土の三類型を設定し、日本をはじめ世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした内容となっている。


今日なお、論議を呼んでやまぬ比較文化論の一大労作である。

私たち人間の源泉が何たるか、考えるきっかけに。



<目次>


序 言


第一章 風土の基礎理論

一 風土の現象

二 人間存在の風土的規定


第二章 三つの類型

一 モンスーン

二 沙 漠

三 牧 場


第三章 モンスーン的風土の特殊形態

一 シ ナ

二 日 本

イ 台風的性格

ロ 日本の珍しさ


第四章 芸術の風土的性格


第五章 風土学の歴史的考察

一 ヘルデルに至るまでの風土学

二 ヘルデルの精神風土学

三 ヘーゲルの風土哲学

四 ヘーゲル以後の風土学


解 説……井上光貞




和辻 哲郎
日本の哲学者・倫理学者・文化史家・日本思想史家。『古寺巡礼』『風土』などの著作で知られ、その倫理学の体系は和辻倫理学と呼ばれる。法政大学教授・京都帝国大学教授・東京帝国大学教授を歴任。日本倫理学会会員。文化勲章受章。 兵庫県出身。東大哲学科卒。ニーチェなど西洋哲学を研究。

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