オルタナティブ民俗学 / 著者・島村恭則、畑中章宏 / 誠光社
小さな経糸
あることを調べる時に必ずやることといえば、それらの過去を振り返ってみることだ。それが土地に根付くことであれば歴史、言葉であれば語源である。そこに思いを馳せることによって、今どうしてその場に立ち現れているのか、ということが意外とすんなりと腑に落ちていくものだ。幾重にも積み重なっている縦糸の系譜は、物事が突如としてそこにあるのではなく、脈々と連なったものの集積なのだ。その際たるものが、私たち自身であるということを忘れてはならない。
さて、そんなことをついつい考えてしまうのが、本書『オルタナティブ民俗学』だ。在野のネットワークを重視し、新たな記述法を模索、アカデミアが重視しない周縁や身の回りにこそ目を向けた、「未来の学問」を語り尽くした本書。
農政官僚であった柳田國男が志した、地方学であり、民間学でもあった民俗学とはどのような学問か。民俗学にとって東北や沖縄は辺境か中心か。民俗学と民藝運動はどのように接近し、どのように袂を分かったのか。民俗学に女性たちはどのように参加し、民俗学は女性たちとどのように関わったのか。そしてこれからの世界的学問である民俗学の行方は。人々が生きた証の経糸を考えていく一冊だ。
在野に位置する編集者であり、民俗学者畑中章宏と、21世紀の日本民俗学をリードする島村恭則が、膨大な人名書名を連ねながら語り尽くす民俗学のオルタナティブ性。2024年、誠光社にて開催された前六回の連続対談レクチャーに加筆修正を施し書籍化。ブックデザインは『アウト・オブ・民藝』と同じく、軸原ヨウスケ・中野香によるもの。帯を広げると柳田國男を中心とした民俗学相関図を掲載。
民俗学がオルタナティブ
民俗学のオルタナティブ
ぜひ小さな経糸を感じていただきたい。
<目次>
第一回 柳田も折口もオルタナティブだ
第二回 〈民間学〉としての民俗学
第三回 〈東北〉〈沖縄〉は周縁か、中心か
第四回 〈民俗学〉と〈民藝〉は、アートをどう捉えたか
第五回 〈女〉の民俗学、〈性〉の民俗学
第六回 民俗学の未来
島村恭則
関西学院大学社会学部長、教授。世界民俗学研究センター長。博士(文学)。専門は現代民俗学、民俗学理論。1967年東京都杉並区生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科文化人類学専攻単位取得満期退学。
畑中章宏
1962年、大阪府生まれ。民俗学者。近畿大学法学部卒業。災害伝承。民間信仰から最新の流行風俗まで幅広い対象に取り組む。


