澄んでゆけ住まい——古民家からひらく、生活の哲学 / 著者・寿木けい / 晶文社
機微に澄ます
新居に住んでから1年が経った。全ての季節をこの家で過ごし、ようやくこの場のポテンシャルや可能性を感じることができてきた。この場所の土、風、光、水というものはいくら性能が高い家に住んでいるからといって無関係ではいられない。風通しが良いのはいいのだが、良すぎることは必要なものまでも吹き飛ばしてしまい、結果として育てようと思っていた木々や草花などは上手く根付かないなんてこともあった。それは他の要素も同じこと。自分たちの感覚を研ぎ澄ませながら、そして自然の要素に耳や目を澄ませながら、お互いのいい塩梅というものを探り合った一年と言っていいのかもしれない。こうした機微を感じることが生きてゆく、暮らしてゆくということなのだろう。
さて、本書『澄んでゆけ住まい——古民家からひらく、生活の哲学』を読んでみると、その思いが一層強くなることだろう。本書は著者・寿木けいさんが実際に移住をして古民家をリノベーションしていく中で感じたことを上手く言語化されているのをまとめた生活の哲学のエッセイとでも言える一冊。
家づくりが生き方を澄ませてゆく。女が家をもつ困難を乗り越えて「私」の家ができるまで。
東京で慌ただしく過ごした日々から離れ、山梨にある築130年の古民家へ。 住まいに併設した紹介制の宿「遠矢山房」を営みながら、 2人の子供、1匹の犬と暮らしはじめる。 家の購入から改修、毎日の手入れ、女が家をもつということ。
やさしく、しゃんと生きる。
著者の住まいへの願いと愛しさが詰まった「家」を見つめたくなる一冊。
<目次>
序 住まいをつくる
- ぶどう畑の小さな家
- 寿木邸 間取り図
- 過去を澄ます
- 名を澄ます
- 未来を澄ます
- 日々を澄ます
- 心を澄ます
[column]
家に値段を付ける/最大の防犯は挨拶である/引越しそば/玄関先の教え/外構は暮らしながら
[特別寄稿]
寿木邸のこと(坂野由美子)
寿木けい
大学卒業後、出版社に就職。編集者として働きながら執筆活動をはじめる。25年間の東京生活を経て、2022年に山梨市に移住。築130年の古民家を改修し、自邸を兼ねた紹介制の宿「遠矢山房」を開く。調理から薪割り、室礼まですべてを手がける。富山県砺波市出身。主な著書に『いつものごはんは、きほんの10品あればいい』(小学館)、『閨と厨』(CCCメディアハウス)、『土を編む日々』(集英社)、『愛しい小酌』(大和書房)、『わたしのごちそう365』(河出文庫)、『泣いてちゃごはんに遅れるよ』(幻冬舎文庫)、『わたしの美しい戦場』(新潮社)。



