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江戸の二十四時間

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江戸の二十四時間 / 著者・林美一 / 河出書房新社



止まっていた時の流れ



一日24時間。これは現代人にとって至極当たり前のことだろう。小さい頃ダラダラと過ごしていると親にこのことを口酸っぱく怒られたものだし、今は自分が息子に口酸っぱく言い聞かせている。けれどこの1日24時間という概念はわが国の会石後の明治以降に浸透したものだというからまだ歴史は浅いのだ。それ以前の江戸時代は、不定時法という日の出と日没を基準に昼と夜を6等分する時刻制度に準っていた。だから夏の朝6時は明るいのに、冬の朝6時は暗いということはなく、人間の行動自体が日の出と日没に準じていたようだ。これは生命体として実に理にかなったある種の習慣のように思える。信州・上田に移住してから早寝早起きを習慣にしているが、冬は明け方まで暗いのでなかなか起きられないが、明け方が明るくなる初夏や夏は自然と早く起きれるということを身をもって証明できている。


さて、なぜこんな時間について話をしているのかといえば、本書『江戸の二十四時間』を読んだことがきっかけになっているからだ。江戸の一日は明け六ツの鐘の音とともに始まり、大奥の御錠口も長屋の木戸もこの時刻に開く。今の午前六時ごろ、将軍の起床する時間でもある。老中などの重職は午前十時には登城し、そのころには銭湯や本屋が開く。大江戸八百八町に生きた、あらゆる階層の人びとの、息遣いまでが聞こえるような昼と夜、時々刻々の生態を、時代考証家の林美一が活写した本書。様々な役職や位の人たちの24時間の生き様がこと細やかに、そしてその所作がどのような意味を成しているのかということが丁寧に綴られているので、まるで、何かの浮世絵の世界が時を超えて頭の中で動き出しているような感覚へと誘われることだろう。


時間というのは人間が生きる中で生まれたものだということを改めて気づかせてくれる一冊だ。


<目次>
長屋住民の二十四時間(寛政四年二月十九日)
堀田家廃絶の二十四時間(万治三年十一月十五日)
綱吉・将軍宣下の二十四時間(延宝八年八月二十二日)
岡っ引・吉原権九郎の二十四時間(明和六年六月二十九日)
旗本・細田時富の二十四時間(天明元年十二月十九日)
艶次郎・吉原遊びの二十四時間(天明七年某月某日)
将軍・家慶の裏表二十四時間(天保十二年四月十五日)
定町廻同心の二十四時間(天保十二年十二月二十三日)



林美一
1922
年、大阪に生まれる。大阪市立東商業学校卒。江戸文芸研究家として、江戸艶本・浮世絵・戯作・時代考証まで幅広い研究・著作活動で知られる。『江戸の枕絵師』『時代風俗考証事典』など著書多数。1999年死去。

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