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氷河が融けゆく国・アイスランドの物語

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氷河が融けゆく国・アイスランドの物語 / 著者・アンドリ・スナイル・マグナソン / 青土社



人生の時間軸



自分が影響を与えることのできる時間というものはどれくらいのものなのか。

僕は小さい頃に曽祖母に一度だけあったことがある。幼かったからどんな話をしたのかということについてはほとんど記憶にはない。けれど、祖父母の家のある上田から曽祖母の家の佐久までの道を祖父が危なっかしく運転していたことや、曽祖母の前では母が孫のそぶりや口調になったという違和感、そして何より曽祖母がすごく大きく感じたことだ。昔に比べれば長寿になったとはいえ、晩婚化が進んでいる昨今、曽祖母や曽祖父が生きている間に会えるという状況は、自分が幼いころでさえかなり珍しかったので、今はなおさらそうかもしれない。こうしたことも相まってその存在の大きさというものを幼いながらも肌身で感じていたのかもしれない。交わした言葉の数以上にいのちとしての大きさがそこにはあったのだ。

先に挙げた自分が影響を与えることのできる時間軸ということは本書『氷河が融けゆく国・アイスランドの物語』に記載された一節を引用させてもらって問いかけたものなのだが、まさしくこの本の内容が過去の先人たちの視点を辿る内容になっていて自分も幼き頃の記憶が蘇ってきてしまったのだ。

火山の麓で、氷河の上で、崇高な大地の前で――

アイスランドに生きる作者が自分自身や家族、これまで関わってきた人たちの視点、そして古くから伝わる伝承や北欧神話から、人と自然の「これまで」と「今」と「これから」を書き留める。すべての人に送る、物語のような随想録。

ここに描かれているエピソードは有名人たちの伝記でも過去に起きた重大事件のルポルタージュでもなく、市井の名もなき小さな話。古い写真を一枚一枚丁寧に見て語るような内容になっている。そして先の問いを持ちながら本書を読み進めていると、その時間軸は自然の変化の時間軸と折り重なっていくことが実感できるはずだ。


ぜひ静かにページをめくってもらいたい一冊。



<目次>


数奇な時代を歩まんことを

愛し子

未来についての会話        

スライド

神の静寂な無辺

書くことの堰堤

物語を語れ

理解できない言葉

始祖の牛、アウズフムラを探して

聖者の訪問

間違った神からの啓示

過去に戻る

ワニの夢

同時代のための神話        

北緯六四度三五・三七八分、西経一六度四四・六九一分

氷霜のように白き宇宙の母

白い巨人にさよならを

蒸気機関に宿る神

もうほんのすこしの言葉を

海よ、青き海よ

きっと全部うまくいく

ダラムサラの客室にて、ダライ・ラマと話す

乳の霧のなかで

トルビャルナルソンワニ

二〇五〇

未来の会話

アポカリプスの今 Covid-19に寄せて

原注

訳者あとがき



アンドリ・スナイル・マグナソン
1973
年レイキャヴィーク生まれ。児童文学作家、口承文芸研究家、自然保護活動家。『青い惑星のはなし』(学研、2007)で初のアイスランド文学賞(文芸書部門を受賞。『ラブスター博士の最後の発見』(創元SF文庫、2016)でフィリップ・K・ディック賞特別賞、イマジネール大賞を受賞。『よみがえれ!夢の国アイスランド』(NHK出版、2009)で2度目(専門書・一般書部門)、『タイムボックス』(NHK出版、2016)で3度目(児童書部門のアイスランド文学賞を受賞。

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