続・ゆっくり、いそげ / 著者・影山知明 / クルミド出版
『△—それを180度ひっくり返して、▽の社会にしてみてはどうか。』
本書のまえがきに書いてあるこういった提案からはじまります。
△の社会や組織とは、つまりヒエラルキー型のThe組織のイメージのもの、そして▽はというと一人一人の個性が植物が育つように自由に育っていくイメージです。
著者の影山知明さんは東京・西国分寺にあるクルミドコーヒー、国分寺にある胡桃堂喫茶店の店主であり経営者です。
本書の内容はこの提言を軸に、影山さんが東京・西国分寺国分寺エリアを中心にご自身が自ら実践して得た経験則が一冊にまとめられています。
とは言っても、言うは易く行うは難しで一筋縄にはいかないことの方が多そうですが、日々お店を営んでいく中で今「あるもの」に着目し、それらの組み合わせから何かを想像していく「ブリコラージュ」的な考え方が、小さくは自身のお店の中、そしてその周辺へと伝播している様子が伺えます。
お店とお客様、従業員と経営者。肩書きやその場の役割は異なれど、人と人との関係性を見直していくことが▽の社会に向かっていく一つの手がかりなのだと感じました。けれど、一夜にして変化が起こるわけではありません。それは、影山さんが用いる植物で例えるなら、自然や植物を人間のエゴでコントロールしようとする手の掛け方ではなく、歩みを揃えそれぞれのいのちに任せて共に育んでいくという気概が大切なのだろうとも思いました。
時間軸を長く捉え、ゆっくり、いそいだ先で振り返った時に自分が歩いている道がこれまでと違う道を歩いていることに気がつくのかもしれません。
いつものやり方を何か変えてみたい方、そんな勇気を欲しい方にヒントや気づきを与えてくれる一冊です。
<目次>
第一章 植物が育つようにお店をつくる
第二章 種の話
第三章 土の話
第四章 一つ一つのいのちの形をしたまち
第五章 いのちをいかし合う組織
影山知明
クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店 店主
1973年西国分寺生まれ。
前著に『ゆっくり、いそげ ~カフェからはじめる人を手段化しない経済~』(大和書房)。