スペイン・マドリッド出身で、現在はベルギー・ブリュッセルに暮らし拠点とするマリア・バオリの作品は、アイデンティティが物理的/非物理的空間に対してどのように関係するかを検証するための出発点として、記憶と空間に焦点をあてます。
写真の操作性の探求から始動し実践を重ねていくうちに、余々に協同的で即興的なツールとしてのカメラへの興味が募ります。主題そのものが対話をはじめ、反応よりも疑問を駆り立てる点に魅せられていきました。
写真は我々が生きる世界をリサーチし、記録し、理解するのに完璧なツールである以上に、もっと重要なことは、“人間の感情を取り扱う方法だということ。そう捉える作者は、写真が真実を明らかに 他者とつながる方法によって真なる経験を語ることができると信じています。
それは計り知れない創造的エネルギーと喜びの源であり、そうでなければ内に秘めたままであったろう自分自身の宇宙(世界)の一部を分かち合うことによって、人生と経験に意味を与えてくれる。”知覚"というコンセプトに突き動かされる彼女の表現において写真は、フィクションのさまざまなレイヤーとしてだけではなく、調和を根付かせたり修正するためのかけらとしても用いられます。
写真・サイアノタイプ(青写真)・コラージュ・作旬を織り交ぜた多層的な物語のコラージュが、一冊の自費出版物としてあらわれました。夢と現実をトレースし、地球上に生きるすべてのいきものが共通して備える詩的な感性を指し示してくれることでしょう。タイトルのごとく『夢の波(Vague de reve)』に身を委ね、耽美的なひとときを味わい尽くしてもらいたいです。