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思いがけず利他

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思いがけず利他 / 著者・中島岳志 / ミシマ社




業の導き




昔から恩着せがましいことが嫌いだ。それはされることはもちろん、自分がすることもだ。そんなことだから他人からは親切には思われることは少ないように思う。どちらかというと取っ付きにくい人間なのだろう。

それでも街中ではめちゃくちゃ道を聞かれるし、海外に行っていても聞かれるのはなぜなのだろう。そして聞かれたからには全力で応えたいと思ってしまう。それは先に言ったように恩を重ねたいからということでもなく、人にいい人だと思われたいということでもなく、偽善でもない。ただそこで問われたことに対しての探究心や自分自身が解りたいということなのかもしれない。

こういった自分の力ではどうしようもないことを『業』ということを本書『思いがけず利他』で知った。そしてその『業』はオートマチックで勝手に動いてしまうらしいから面白い。まだ道半ばの人生ではあるけれど、その歩みを振り返ってみても、自分意外の何かの導きによってその道を決めたことの方が多い。その何かが誰かであったり、はたまた得体の知れない自分自身の奥底から突き動かされていることだったりだ。


It's automatic!?


誰かのためになる瞬間は、いつも偶然に、未来からやってくる。

東京工業大学で「利他プロジェクト」を立ち上げ、『利他とは何か』『料理と利他』などで刺激的な議論を展開する中島岳志さんの渾身の著作。

今、「他者と共にあること」を問うすべての人へ。

自己責任論も、「共感」一辺倒も、さようなら。

偽善、負債、支配、利己性……。利他的になることは、そう簡単ではありません。

しかし、自己責任論が蔓延し、人間を生産性によって価値づける社会を打破する契機が、「利他」には含まれていることも確かです。——「はじめに」より


本書は、「利他」の困難と可能性を考える。手がかりとなるのは、居心地の悪いケアの場面、古典落語の不可解な筋書き、「証明できない」数学者の直観、「自然に沿う」職人仕事の境地、九鬼周造が追求した「私は私ではなかったかもしれない」という偶然性の哲学……など。

「利他の主体はどこまでも、受け手の側にあるということです。この意味において、私たちは利他的なことを行うことができません」 「利他的になるためは、器のような存在になり、与格的主体を取り戻すことが必要」 ——本文より


意思や利害計算や合理性の「そと」で、私を動かし、喜びを循環させ、人と人とをつなぐものとはなんなのだろうか。


中島岳志

1975年大阪生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年、『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『パール判事』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『アジア主義』『下中彌三郎』『保守と立憲』『親鸞と日本主義』『利他とは何か』など。ミシマ社からは『現代の超克』(若松英輔との共著)、『料理と利他』(土井善晴との共著)を刊行。

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