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波打ちぎわの物を探しに

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波打ちぎわの物を探しに / 著者・三品輝起 / 晶文社



モヤモヤの言語化



久々に出張や用事で東京に行くことがあると気がつくことがあります。それは東京駅について直ぐに感じることでもあるのですが、道ゆく人の多くが何かしらの“仮面”を被って自分の素を隠して生きている感じを受けるのです。東京が信州に比べて人口が多いということで確率的にはどのエリアにいても同じなのだろうと思いますが、人口が多い分そういった方たちを多くいるように感じているだけなのかも知れないです。もちろん自分も長らく東京で育ってきているので、どうしてそういう状況が生まれているのかといったことも重々承知しているつもりなのですが、こうして東京を離れて暮らし、時たま東京という大都市に戻ってみると気づかされることが多いのです。


さて、西荻窪にある雑貨屋『FALL』の店主・三品輝起さんが本書『波打ちぎわの物を探しに』の冒頭の章『雑貨屋プレイ』で描かれている内容が、まさしく私が東京に行った時に感じる不思議な違和感をうまく言語化していました。三品輝起さんは他の著書でもそうなのですが、こういった世の中の状況の中に浮遊している何かしらの違和感を自身の体験などに照らし合わせながら言語化し文章として表現をされています。自分一人ではなかなか考えも及ばないことにも目を向けているので毎回読後に世の中の解像度が変化していくことを感じられるでしょう。


今世の中の状況は刻々と変化しています。いままさに波にさらわれんとする様々な価値をひとつずつひろいあげる珠玉のエッセイ集です。

本、アート、工芸、情報、音楽、おしゃれ、サブカル、聖と俗……、ゆらぎ続ける世界のはざまで生きのびる方法をケレン味のない筆致で綴る一冊です。



<目次>
雑貨屋プレイ
境界
汚部屋はどこへ消えた?
部屋とメディアと私
インターネットの波うちぎわで
マイミュージック
フランク・ザッパと本屋の石
本を読むひとたち
本を撮るひとたち
おしゃれな密室の内と外

デザイン、芸術、クリエイティブ
おむかえのあとさき
橋を渡る



三品輝起
1979 年京都府生まれ。愛媛県にて育つ。2005 年より東京の西荻窪で雑貨店「FALL」を経営。著書に『すべての雑貨』(ちくま文庫)、『雑貨の終わり』(新潮社)がある。

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