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初めて語られた科学と生命と言語の秘密

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初めて語られた科学と生命と言語の秘密 / 著者・松岡正剛、津田一郎 / 文藝春秋



情報の渦の中で


 

私たちの生活の中で必要なものは、衣食住の次に情報ということが言えるだろう。特に近年ではインターネットやSNSが急速に発達し、この世の中に広がるありとあらゆる情報が集約されまた誰でも容易に閲覧できるようになった。同時にこうした世の中になるに連れて非常に重要な能力として情報リテラシーと言われる情報活用能力が問われるようになってきたということに気づいている方も多いのではないだろうか。

何が正しく、何が誤りなのか。さらに厄介なのがAIなども対等してくるとその見分けなどもかなり困難になってくる。ネットの中に漂流する言葉や画像データの海の中で私たちは何を信じていけば良いのかという大きな問いに今直面していることだろう。

こうした情報もネットの文字情報と人の声に乗って聞こえて来た情報で同じ内容であっても感じ方が異なる印象を受ける時がある。なぜだろうか、生身の人の声に乗った方が信憑性が増してくるのだ。その一つに間の効果というものがありそうだ。私たちが無意識に話している言葉と言葉の間、文節と文節の間、これらの間に意味を含ませること、そしてその含まれている意味を読み取る感覚を私たち人間は持ち合わせているはずだ。

これは決してAIなどにはとって代わられたくないものである。


さて、本書『初めて語られた科学と生命と言語の秘密』はタイトルの通り、科学と生命と言語の関係性についてまとめられた一冊だ。話者のひとりはカオス理論の確立者であり、複雑系科学の第一人者の数学者、物理学者の津田一郎。またもうひとりは、「編集工学」を掲げ、情報を生む世界観を追究してきた博覧強記の松岡正剛。

1980年代初頭、新しい生命科学と数学が生まれつつある胎動に胸躍らせていた松岡氏は、津田氏と出会い、科学に物語性を接続するその才に触れ、心打たれたという。

それから数十年。ChatGPTをはじめとするAI技術や情報技術の進展、ゲノム解析を含む分子生物学や脳科学研究の進化により、「生命と情報」をめぐるボキャブラリーは増え、その起源と原理の解明への道筋は遥かに整いつつあるように見える。それでもまだ、何かが足りない。言語の秘密も明かされないままだ。これまでいったい科学は何を解き明かしてきたのか。はたして生命原理を解き明かす「神の方程式」はあるのか? ヒトの意識と自己の行方は――。


湯川秀樹、南部陽一郎らとも科学の最先端をめぐって議論を交わし、人文知と科学の知を架橋してきた松岡氏が、その「言葉」で、科学の諸ジャンルに通じた津田氏に丁々発止の質問を投げかける。切っ先鋭くもユーモア交え、「科学と生命と言語の秘密」に迫りゆく(ときに謎が深まりゆく)スリリングな対話が開幕。

岡潔×小林秀雄『人間の建設』の現代版がここに誕生!


<目次>

第1章 カオスと複雑系の時代で

理科的思考の来し方と行方/二人の出会い/新しい世界観を提示したカオス理論/線形数学から非線形数学へ/カオス的脳観/神の全知全能に代わるものを探して/新しい生命原理の胎動/空白を満たしてくれた出会い/「読む」から「書く」へ/科学の「書く」は時間がかかる

第2章 「情報」の起源

「情報」の起源を考える/「場所を取る」ということ/われわれの時間感覚を考える/カルノー・サイクルの話/「時間」の始まり/生命の条件をめぐる 「分化」を考える/情報が先か、部品が先か/「情報」の起源はAI化できるのか?/「幅のある時間」

第3章 編集という方法

編集という方法/なぜ「編集工学」なのか/編集装置を用意する/「膜の発見」/タンパク質と言語の情報コーディング/言語とタンパク質の「選択原理」/思考するリバース・エンジニアリング/因果はどこから生まれるのか/観測者とは何か/「定常的な自己」はなぜ可能なのか/「心」と「言語」は似ている/声と文字の関係/ノイズや「破れ目」が意味を生成する

第4章 生命の物語を科学する

「物語る」とは何か/科学にも物語性はあるか/解釈できる構造/デヴィッド・マーとの出会い/変分問題の衝撃/神か、デーモンか/生命の統一原理は書けるのか/拘束条件とは エピジェネティック・ランドスケープ/拘束条件と進化/いい初期値を選んだ者だけが生き残る/エルゴード問題と偶有性

第5章 脳と情報

脳と「情報の編集」/学習とはニューロンの結合が変わること/電気信号と化学信号/神経系に「分子言語」はあるのか/「閾値」をどう決めているか/キナーゼとホスフォターゼ 「自己他者言及的」な反応/閾値と文学/酵素にはデーモンが入っている/酵素は編集子

第6章 言語の秘密/科学の謎

人類が提出した世界観をふりかえる/「言語」を考える/「言語の起源」の謎/仮説をめぐる/オカルトを否定しない科学/科学と神秘/意識とは何か、宗教とは何か/意識をめぐる八つのアプローチ/スピリットの由来と行方/3の不思議/「三体」ということ/意識は「引かれるもの」なのか/瞑想と意識/「A -B」のAとは何か/世界の成立には引き算が必要だ/「いない、いない、ばあ」の原理

第7章 「見えないもの」の数学

高次の美しさ、非線形的な世界/ローレンツの世界観/「まだ見えないもの」を編集する/センスがいいとは何か/「ほしがる」ことからセンスが生まれる/科学と能/「見え」の問題/超伝導の「見え」/深く思考する快感を求めて

第8章 「逸れていくもの」への関心

この対話が示している懸念/「先行した世界」に対する態度/感動を伝えるための世界観/「わずかな情報」と全容との関係/「逸れていくもの」への関心/杉浦康平のデザイン/本棚も編集空間

第9章 意識は数式で書けるのか

「まれな現象」を感知できる意識/読みながら軌道を変える/「意識の捨て方」の「偶有性」を持たせる/見えないものを見る 代数の発明/同定と区別が代数に/代数とトートロジー/数学はなぜ論理を必要としたのか/身体運動と数学的思考

第10章 集合知と共生の条件

人間に集合知はあるか/無意識の研究はなぜ深まらないか/学問集団のありかた/集合知とスモールワールド/寄生と共生

第11章 神とデーモンと変分原理

変分原理は神の原理/脳に変分原理が見えた/「存在の発現」の秘密に向かう/創造の秘密/物語生成システムはできるのか/複雑系の定義を書き換える/複式変分能/デーモンとゴーストの再会




松岡正剛
1944年、京都市生まれ。早稲田大学仏文科出身。東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を経て、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。1971年に 伝説の雑誌『遊』を創刊。日本文化、経済文化、デザイン、文字文化、生命科学など多方面の研究成果を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。日本文化 研究の第一人者として「日本という方法」を提唱し、私塾「連塾」を中心に独自の日本論を展開。一方、2000年にはウェブ上でイシス編集学校と壮大なブッ クナビゲーション「千夜千冊」をスタート


津田一郎
数理科学者。専門は応用数学、計算論的神経科学、複雑系科学。大阪大学理学部物理学科卒業。京都大学大学院理学研究科物理学第一専攻博士課程修了。理学博士。北海道大学大学院理学研究院数学部門教授などを経て、中部大学創発学術院院長・教授

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