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ひとりみんぱく

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ひとりみんぱく / 著者・松岡宏大 / 国書刊行会



モノ思いにふける



旅先では必ず何かを買って帰るようにしています。それは、誰かのお土産という意味でもそうかもしれませんが、自分自身の記憶として何かを必ず持ち帰るのです。最近でこそ、それが食べ物の場合がほとんどなのですが、以前はモノとして持ち帰ることが多かったように思います。

旅から帰りそれを眺めていると、その土地の何か空気感まで持ち帰ったような心持ちになり、そのものをどうやって手に入れたのかというシチュエーションまでもが映像となって蘇ってくるような感覚です。言い換えれば記憶を蘇らせてくれるモノなのかもしれません。


写真家で編集者の松岡宏大さんの著書『ひとりみんぱく』はそんなことを思い起こさせてくれる一冊になっています。タイトルだけを見ると民泊?と思ってしまうかもしれませんが、みんぱく=国立民族学博物館のほうなのです。写真家・編集者・ライターとして世界中を旅してきた松岡宏大さんの部屋には、世界各地の文物であふれており、自身の家がすでに民俗学博物館なのではという見立てから『ひとりみんぱく』と銘打った本書を作りました。

ページを捲ると、1990年代よりバックパッカーとして世界をめぐり、現地で出会った人々や景色、そして蒐集してきた数々の物もの。土器、漆器、仮面、仏像、絨毯……どこか不思議な魅力をもつ工芸、民藝の数々が写真で掲載されています。そして文物からは旅の記憶があふれだし、含蓄? 蘊蓄? 軽快なるエッセイを挟みつつおくる本書は、物の本か? 旅の本か? わからなくなるくらい入り込むことができることでしょう。


物思いに耽る、いやモノ思いにふけられる一冊になっています。



「みんぱく」とは大阪の万博記念公園内、太陽の塔のとなりに建つ「国立民族学博物館」の愛称である。本書の『ひとりみんぱく』というタイトルであるが、これは初めて僕が「みんぱく」を訪れた際、「うちにもあるな……」という感想を抱いたことに由来する。

 仕事柄、世界中を旅しながら暮らしてきたが、行く先々でその土地の文物を蒐集してしまうところがある。その文物は、世間的な価値とはまったく無縁だが、自分の好奇心の方向性から、その国の文化・歴史・神話を内包しているものを好む傾向にある。そして、日本に帰ったあと、部屋で一緒に旅の思い出を語り合える話し相手のようなものであることが重要だと考えている。もちろん日本で手に入れたものや、人からいただいたものも含まれている。しかし、自分の旅してきた道筋から外れないよう心がけている。蒐集の基準軸は、常に「個人的な旅の記憶」と「人とつながり」に置いている。

 今回、本書を著すにあたり自らの蒐集した品々をあらためて見返してみたが、本当に役に立たないものばかりだ。残念だ。同時に、僕にとってはかけがえのないものばかりだ。

 これらの文物を手のひらにのせ愛でてみる。重みや質感、細工、その歪みや温みを確かめる。太陽の光の下で陰が際立つものもあれば、暗闇の中でこそ光り輝くものもある。それは自分の手で触れてこそわかることで、自分の足で旅をしてこそ出会える風景と一緒だ。

 僕はこれらを手に入れたときに出会った人たちの顔や祈りの景色を思い出すだろう。そこで吹いていた風や夜空を満たす星のことを思い出すだろう。

 旅の記憶こそ僕にとっていちばんの財産なのだから。

(「まえがき」より)




松岡宏大
写真家・編集者など。『地球の歩き方 インド』など、インドやアフリカを中心に辺境エリアのガイドブックの取材・編集に携わる。共著に『持ち帰りたいインド』(誠文堂新光社)、『タラブックス――インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)などがある。またインドのTara Booksよりバッジュ・シャームとの共著『Origins of Art: The Gond Village of Pathangarh』を上梓。写真展として『アディワシ――大地と生きる人々』(bonon kyoto、KYOTO GRAPHIE KG +)、『TRIBES in BASTAR』(Rungta)を開催。KAILAS名義で著作やイベントもおこなう。

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