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THE BLISS OF GIRLHOOD JAPAN EDITION

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THE BLISS OF GIRLHOOD JAPAN EDITION / KRISTINA ROZHKOVA / 写場



虹のような少女時代



幼少期に祖父母のいる信州・上田に里帰りして母の姉と弟家族も集合して大家族で生活する1ヶ月間が本当に待ち遠しかった。大人との関係が父や母以外の叔父さん叔母さんと祖父母と多方面に広がり、東京で感じていた関係性の窮屈さのようなものが解放されることも、待ち遠しかった要因の一つであったけれど、歳の近い従姉妹たちと毎日遊ぶ日々が夏の到来を楽しみにさせてくれた。


従姉妹は姉妹。お姉さんの方は自分の姉の一つ上なので自分とは5歳違い、そして妹の方は僕と同級生だった。僕は、女の子たちに混じって遊ぶ黒一点の状況だったのだが、幼い頃は性別などはお構いなし、4人で暴走族よろしく、ひたすらに三輪車で祖父母の家の前の畦の坂道を滑り降りた。その坂道を皆で“虹の滑り台”と名づけ、誰がいち早く滑り降りれるか、飽きもせず日が暮れるまで遊ぶのが毎年の夏のお決まりだった。


月日の流れは残酷で、上の姉たちは一年ごとにその“虹の滑り台”では遊ばなくなり、そうしていつしか同級生の子も遊ばなくなり、自分だけになってしまった。仲が悪くなったというわけではないのだが、少しずつ思春期に入るにつれ、精神的な距離感、そして性別という、どうしても超えられないし、歳を重ねるに連れ、そこに存在するのかしないのか定かでもない壁が自分と他の3人との間に立ちはだかっていたように思う。



このエピソードはあくまで、男性である僕からの視点なのだけれど、当時の従姉妹や姉たちはどんな風に感じていたのだろうか。そんな想像の助けになりそうなのが、こちらの本書『THE BLISS OF GIRLHOOD』だろう。ロシアの写真家のクリスティーナ・ロシュコヴァが少女時代という眩しくも危うい時期の感覚を被写体となった少女たちの視点で切り取っている写真集。


「信じられないほどに儚いのに手を焼くほどに強情で、優しいのに残酷で、夢のように美しい天使のようでも、悪夢を支配する魔女のようでもある。少女時代はそんな風に数え切れないいくつもの矛盾をはらむ。あっという間に過ぎ去ってしまうそのひとときを、確実にフレームに収めてみせたのが『The Bliss of Girlhood(少女期の至福)」だ。この作品は、誇張でも何でもなく、彗星のごとくに現れた新時代の少女写真の代表格だ。」


と本書の中でクリスティーナ・ロシュコヴァがインタビューでも語るように、被写体になっている少女たちは、僕が毎年夏に一緒に遊んでいた従姉妹と姉たちそのものだった。無邪気でキラキラ、そして少し背伸びした大人を真似た目線で一直線に感情をぶつけてくる、あの頃の彼女たちの姿がそこにあった。


ページをめくると、あなたが女性であれば自分たちがいつの日か通った道を辿るような感覚、そしてあなたが男性であればそんな少女たちの近くで自分たちとは違うということをまざまざと感じたあの感覚を想起することができるだろう。


甘酸っぱくそして彩り豊かに見えたあの瞬間は、まさに一瞬で消えゆく7色の虹を見ていたのかもしれない。

※表紙カラーが3色あります。お好みのタイプを選択してください。(内容は同じです。)

 

※ポッドキャスト『面影飛行』では、さらに詳しくこちらのアートブックについて語っています。あわせてお楽しみください!

 

 

クリスティーナ・ロシュコヴァ
1996年ロシアのペルミ出身、ペルミ大学で哲学を学ぶ。友人からカメラを渡されて写真を撮るようになったことがきっかけで、ロシアの写真アカデミーFotografikaで写真についての勉強を始める。在学中の2020年に始めたプロジェクト”DACHA”(旧ソ連で一般的だった農園付きの別荘)を撮ったのシリーズがPOY Asiaで賞を取ったことをきっかけに、世界のメディアから注目を集める。


発行:写場
仕様:H220mm x W156mm x D13mm ソフトカバー 160ページ

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