手塚治虫の森 / 著者・手塚治虫 / 山と渓谷社
日本の漫画界の巨匠・手塚治虫。
その手塚治虫が遺した作品のなかから、「森と人間」を手テーマとしたマンガを10編セレクトしてまとめた作品集。
この本でセレクトするマンガは、森を舞台とする寓話、ミステリー、環境問題まで、幅広い作品のオムニバスですが、単に自然をテーマに描いているというよりは、人間の持つ限度がない欲望や心の中にある疑念などがよく描かれているように思います。
特に、「峠の二人」では人を最後まで信じられないということや、「ブラック・ジャック - ナダレ -」は生命科学を探究するあまり一線を超えてしまうという愚かさなどが描かれており、自ずから然むる(おのずからしからしむる)ことの難しさなどをストーリーで表現しているのは流石でした。
マンガなので手塚治虫を知っている世代、よく知らない世代含め、「人間と自然の関わりと共存」という普遍的なメッセージを伝える作品集です。
【掲載作品の初出年・媒体名】
「大将軍森へ行く」
1976 年8月『月刊少年マガジン』(講談社)掲載
「メタモルフォーゼ」第3 話として掲載
「峠の二人」
1982 年11 月18 日『コミックモーニング』(講談社)掲載
「サスピション」第2 話として掲載
「熟れた星」
1971 年2月『SFマガジン』(早川書房)掲載
「ブルンネンの謎」
1970 年2月4日『少年チャンピオン(秋田書店)』
「ザ・クレーター」第13 話として掲載
「ブラック・ジャック - ナダレ-」
1974 年2月11 日『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)掲載
「緑の果て」
1969 年5月『ファニー』(虫プロ商事)掲載
「八丁池のゴロ」
1968 年1月1日~12月29 日
『赤旗日曜版』(日本共産党中央委員会)掲載
「三つ目がとおる - オハグロ沼の怪物- 」
1975 年10 月12 日『週刊少年マガジン』(講談社)掲載
「ブッダ -アッサジの死-」
1976 年2月~3月『希望の友』(潮出版社)掲載
「三人の侵略者」
1969 年11 月5日『少年チャンピオン(秋田書店)』
「ザ・クレーター」第7話として掲載
「火の鳥 - 異形編-」
1981 年1月~4月『マンガ少年』(朝日ソノラマ)掲載