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ストリートの精霊たち

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ストリートの精霊たち / 著者・川瀬慈 / 世界思想社

 

 

社会という枠の幻想



 

学校という一つの社会に小学校から高校までの12年間に通ったことになるが、それぞれのクラスに一人くらいは、一般的な“常識”というものから外れている子がいたりする。学校やクラスメイトから問題児扱いされている子は、自分のこの12年間を振り返ってみてもクラスにいた。彼らは学校というシステムに順応できず奇行に走ってしまったり、道を誤ったりした仲間を嫌というほどみてきた。クラスからは除け者扱いされているような雰囲気は漂うが、僕はそうした子に対して色眼鏡で見ずにいようと思い、一人でいる時などはたまにそれこそ普通に声をかけていた。実際に学校から問題児扱いされている子と話をしてみると、全然普通の感覚で会話も通じるし、サッカーなどをやっても点取り屋だったりする。

今になって考えてみると、その子を見る社会という枠組みの視点がその子にしてみれば偏っていて、別の角度から見てみれば伸びる芽をたくさん持っていたのだろうと振り返ることができる。

いやいや、そんなのは綺麗事だと思っている方は、ぜひこの日本という場所を離れてこれまでの常識が通じないような場所に滞在してみるといい。自分がマイノリティになるということが如何寂しく不安かということが実感として認識できるはずなのだ。


少々熱くなってしまい、こりゃ失敬ということで本題に戻るが、まさしく本書『ストリートの精霊たち』は楽師や吟遊詩人、娼婦や物乞い、街のゴロツキに物売り、胡散臭いガイドたちが息づく奥深い空間、いわゆる問題児やはみ出し者が多くいるエチオピア、ゴンダールのストリートを舞台に、映像人類学を専門とする川瀬慈さんが現地に飛び込んで体験したことをエッセイとしてまとめている。

彼ら彼女らのことを川瀬さんは“ストリートの精霊たち”と表現しているが、遠くのエチオピアのゴンダールだけに限らず、私たちの身の回りにもこうしたいわゆる“精霊”たちは存在するのではないだろうかと思った。

エピソードを読みすすめていくうちに、社会を色眼鏡で見ることはやっぱりやめたいとそう心に思うのであった。


「ゴンダールのストリート、それほどまでに懐かしく、胸の痛みを伴うほど恋しい場所のある川瀬氏は幸せだ。嫉妬さえ覚える。そして精霊たち、アズマリの少年タガブ、ラリベロッチのテラフン、即興詩人、そのような者たちと過ごした時間の記憶をもっている人生は豊かだ。」(坂本龍一)



<目次>

プロローグ

1 ピアッサの精霊たち

2 太陽のララバイ

3 ムルの蛇

4 たまご売りの少女チャイナ

5 神にささげる歌

6 高原のチャップリン

7 あるシンフォニー

8 約束の地

9 永遠

10 神々との戯れ

11 コロタマリ

12 ヨハネスとの約束

13 再会

14 旅路

15 アニキの流儀

16 十字架

17 エチオピアホテル

あとがき



川瀬慈

1977年、岐阜県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。国立民族学博物館/総合研究大学院大学准教授。専門は映像人類学、民族誌映画。代表的な映像作品に『Room 11,Ethiopia Hotel』(イタリア・サルデーニャ国際民族誌映画祭にて「最も革新的な映画賞」受賞)等がある

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