sprout! 2025 SUMMER ISSUE / 編集/発行人・岡澤浩太郎/ 八耀堂
佇まいの聡明さ
信州に移住をした理由の一つとして、何かを創造している人つまり何かを生産している人のより近くで生活してみたいという漠然としたものがあり、信州という地に居を構えようと決断した。
どうして創造している人の近くにいたかったのかと考えた時に、20代後半から制作していた北欧のクリエイターたちにインタビューしまとめたマガジンa quiet dayの中で何かを創っている方たちから出てくる”本当の言葉”に自分自身の人生に大きな影響を受けた経験からなのだろう。それは今、振り返ってみてもターニングポイントと言えるかもしれない。彼ら、彼女たちの言葉、その言葉を通して垣間見ることのできる瞳の奥に広がる心象風景に魅了されたのだ。その心象風景は山の奥深く木漏れ陽が差し込む穏やかな光が反射した源流の聡明さのようといえば、その澄んだ空気感を感じ取っていただけるだろうか
長野発のカルチャー誌『sprout!』第2号のページをめくり、まとめられた作り手たちの言葉から、そんな懐かしい感覚を思い起こさせてくれた。信州には民藝、工芸、クラフト、農民美術といった言葉と繋がる土地がある。それぞれの言葉は外野が作った枠なだけであって、自らが手を動かし、何かそこから生み出していくプロセスの中に宿る思考や思想には境界がないだけでなく、ある種の通奏低音すら感じることができるのではないだろうか。それは、佇まいの聡明さとも言い換えられる。囚われず拘る、そして生きる。実にシンプルだ。
本誌の中では手仕事の歴史や文化が深い長野県で新たな視点で手仕事を行う作家たちにインタビューがまとめられている。
現代における、ものづくりの意義を考えるきっかけになることは間違いない。
<目次>
■特集「信州の新しい手仕事」
▶長野と手仕事の物語
農民美術…山極佳子さん(上田市立美術館学芸員)
民藝…吉川徹さん+ロジャー・マクドナルドさん(多津衛民芸館)
クラフト…伊藤博敏さん(NPO法人松本クラフト推進協会代表理事)
▶Interview
㓛刀匡允さん
小林寛樹さん+庸子さん(未草・AOIUMA)
イエルカ・ワインさん+関悦子さん
▶Creators File
平勝久さん+瑞穂さん(STUDIO PREPA)
田澤康彦さん+苺禾さん(solosolo)
北嶋宏美さん(せつ)+中山宇宴さん
モリヤコウジさん(FLATFILE)
▶Report
茅葺屋根…渡辺拓也さん(カヤブキLABO)
手づくり花火…原司さん(上清内路煙火同志会)+櫻井拓巳さん(下清内路煙火有志会)
ライ麦ストロー…上原かなえさん(クラフト作家)
▶手仕事に触れられる長野のSPOT
サントミューゼ 上田市立美術館、多津衛民芸館、クラフトフェアまつもと、夏至、10cm、ギャラリー草草舎、芽吹き、そのうへ、SAMNICON、m4Gallery、洋服と工芸 omitsu、紡ぎ舎、普遍と静謐、onri
■信州ニュートリップ
今日も権堂、明日も権堂
■連載
The Four Elements 写真・文=宮本武さん
三上奈緒さんの「縄文」感じてる?
となりの移住者 第2回 伊織智佳子さん(FM長野)
信州民藝 #02 松本箒
コラム信州「ひと夏の思い出」 文=星野文月さん(作家・文筆家)、中瀬萌さん(アーティスト)、埋橋智徳さん(赤石商店)、小島有さん(グラフィックデザイナー・アートディレクター)
リジェネの森 第2回 石橋鉄志さん(yaso)
龍を見た 絵=小城弓子さん 文=青葉市子さん