送別の餃子: 中国・都市と農村肖像画 / 井口淳子 / 灯光舎
音楽学、民族音楽学を専門にしている研究者の井口淳子さんが、中国の農村や都市でのフィールドワークの調査をベースにエピソードがエッセイとして詳細にまとめられています。
1988年から数十年にわたりフィールドワークが行なわれたこともあり、現在のように経済発展した中国からは想像できないような状況なども詳細に描かれています。まるで井口さんとその場で一緒にフィールドワークの旅に出ているような気分のよう。
中国の都市や農村で出会う現地の人々は、「怖いものはない」という皮肉屋の作家がいたり、強烈な個性で周囲の人々を魅了し野望を果たす劇団座長、黄土高原につかの間の悦楽をもたらす盲目の芸人たち……など、〇〇な人とは一言では表現できない、あまりにも人間臭い人々との心の触れ合いが感じられます。
私たちが日々目にしているメディアを通した「中国」はやはり一部であって、そこで生きているのは、やはり人間味溢れる人たちなのだということを感じられるエッセイです。ページの合間のイラストレーター佐々木優さんによる挿絵も現地の暮らしや慣習の細部を生き生きと照らしだすような臨場感が、ストーリーの後押しにもなっています。
【目次】
 はじめに 
 
 序 まだはじまっていないころのお話
 Ⅰ 河北省編 
 第一章 老師的恋 
 第二章 北京の女人 
 第三章 ゆりかごの村 
 第四章 占いか、はたまた芸人か
 Ⅱ 黄土高原編 
 第五章 雨乞いの夏 
 第六章 村の女たち、男たち 
 第七章 黄河治水局のおじさん 
 第八章 尿盆(ニァオペン) 
 第九章 人生も戯のごとく 
Ⅲ 番外編
 第一〇章 頑固じいさんと影絵芝居 
 第一一章 かくも長き一八年 
 第一二章 パリの台湾人 
 第一三章 想家(シァンジァー) 
 第一四章 人を信じよ! あとがき 参考文献



