SNOW FOOD: 雪山で遊ぶ日のレシピ / 著者・リンドル・ヴィンク、翻訳・佐藤澄子 / 2ndLap
その食材がどこからきたか
「その食材がどこからきたか」
最近はもっぱらそんなことばかりを考えている毎日だ。特に自然農で野菜を作り始めてからというもの、農夫の精神や肉体の状態と畑で育つ野菜たちの状態がどこか似よったものになるということを実体験から感じている。それは農法云々ということではなく、植物と人間、いや生きているいのちあるものたちはそういった呼応をしながらこの地球で生きているのだということを実感させてくれる。だからこそ、その生産者がどういった思考や思想を持って食材に向き合っているのかということにとても関心が出てきているという訳なのだ。
以前、金沢の料亭の料理長と一緒に市場や生産者を回ってその周辺、周縁の人々を取材するという仕事をしたことがあった。加賀棒茶に源助大根、加賀蓮根といった地元の在来野菜や食べ物を扱う生産者さんたちに話を聞いてみると、彼ら彼女らが持つ誇りや伝統からの脱却といったことを考えている生産者が多かったこともあり、その料亭の料理人が作る料理は、見た目の華美さは追い求めず、その食材から発せられるものを存分に表現しているように思った。その取材は当の料理人の個人的なインタビューをすることはなかったものの、直接話を聞くよりも料理人のことを深く理解できた気づきのある経験となったのだった。
さて、舞台は変わり本書の舞台はスウェーデンやスイスなどの雪が似合うヨーロッパの国々。シェフでありスキーヤーでもあるリンドル・ヴィンクが、雪山で思い切り遊ぶ日をイメージして選んだ75のレシピをまとめた一冊。
出かける前の、栄養たっぷりの腹ごしらえ。山に持っていく温かいスープやサンドイッチ。山小屋に戻って暖炉の前でくつろぐ夕べにぴったりの、ボリュームのある肉や野菜料理、そしてデザートなど、海外のレシピ本のようなレイアウトに美しいヴィジュアルと一緒にまとめられている。
ページをめくれば、スウェーデンやスイスアルプスのスキーリゾートで料理を作ってきた経験を活かしたレシピが並ぶのだが、その手順はとてもシンプル。でも、ソースや肉の温度などへのシェフならではのこだわりがあること、そして食卓で友人たちを喜ばせたいという気持ちにあふれていることが伝わってくる。
そしてなにより、この本の特別なところが、チーズやシャルキュトリ、伝統の薄焼きパン、地ビールなどの作り手とのやり取りがリンドル・ヴィンクの目線で語られているところだろう。このパートがあることで前後にあるレシピの意味合いが印象深く特別なものへと変化していくことが分かっていただけるはずだ。
日本の山を愛する人々と共鳴するスピリットが詰まった一冊。
<目次>
食と、ふわふわのパウダースノーの喜び
成功への近道
GOD START 出発前
天国のような高みのチーズを目指して
TA MED 持ってでかける
薄焼きパンの伝統を今によみがえらせる
DIREKT EFTER 帰ってすぐに
パウダースノー、IPAを1本、そしてもう1本
LAGA IHOP さっと作ろう
自信に満ちたシャルキュトリ
ラグーと山スキー
S¨OTT 甘いもの
SNOW FACTS
レシピ索引
ありがとう!
ヴィンク,リンドル
スウェーデン屈指の料理人たちの下で腕を磨き、国際料理コンテストではスウェーデン代表を務め、さらにスウェーデンのジュニアナショナルチームのコーチとして、未来の料理人たちを世界料理オリンピックの金メダルへと導いた。現在はプライベートなクライアントのために料理を作り、世界中で刺激と出会いを楽しんでいる。





