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シュナの旅

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シュナの旅 / 著者・宮崎駿 / 徳間書店




未来へのメッセージ




信州に移住をして自然農をはじめてから早5年目となろうとしている。3年目が過ぎた頃だろうか、こんな境地に至った。「あれ、これって種があればどこででも生きていけるのでは」と。私たちの暮らしはあらゆる事柄が入り混じっているので、今やっている仕事や関係性が維持できなくなってしまっては、生きてゆかれないなどと勘違いをしてしまっている節があるように思う。

そんなことはないのでは無いのかというのが、今の自分の考えなのだ。この考えに至ったのは、やはり生きるために必要なこと、つまり食べ物を作るということが自分の考えの核になったというところが大きいのだろう。もちろん野菜ができるまでは自分の力の及ばない自然との対峙、いやそもそも及ぶ及ばないということではなく、いかに自然と共生していくかという、心持ち・マインドが大切だという理解など、農に関わるまではきっと理解し難い部分があったように思うが、人間が人間として生きるベースが自分の中で確固たるものとしてできたことが何よりの自信にも繋がったように思う。

私たちは少し、土から離れ過ぎてしまったのかもしれない。


さて、本書『シュナの旅』は宮崎駿が『風の谷のナウシカ』を発表する前、いわゆる不遇の時代に書き下ろしたチベット民話の『犬になった王子』を元に描いた全ページオールカラーの絵物語だ。とある貧しい国の国王が、荒廃したその土地で育てるための小麦の種を求め旅に出てさまざまな出来事に出会う話だ。時代設定としては『天空の城ラピュタ』と『風の谷のナウシカ』の間の時代でナウシカの時代ほど土地が荒廃している訳ではないものの、荒廃の火種となる争いの片鱗や搾取などが見え隠れするのが、作者の宮崎駿のこの一連の作品群を通してのメッセージや頭を覗き込んでいるようで面白い。奇しくもこの一冊も冒頭に挙げた種が中心に物語が展開していくのだが、作中の文章や絵から何かしらのメッセージを感じ取っていただけるのでは無いだろうか。


未来へのメッセージとして読むとなぜかしっくりくるのは、私だけなのだろうか。




■あとがき■

この物語はチベットの民話「犬になった王子」が

元になっています。穀物を持たない貧しい国民の

生活を愁えたある国の王子が、苦難の旅の末、

竜王から麦の粒を盗み出し、そのために魔法で

犬の姿に変えられてしまいますが、

ひとりの娘の愛によって救われ、

ついに祖国に麦をもたらすという民話です。

―中略―

十数年前、はじめて読んで以来、この民話の

アニメーション化がひとつの夢だったのですが、

現在の日本の状況では、

このような地味な企画は通るはずもありません。

むしろ中国でこそアニメーション化すべきだなどと

あきらめていたのですが、

今回徳間書店の人々のすすめもあって、

何らかの形での自分なりの映像化を

思いたったしだいです。

(1983年5月10日 宮崎駿)



<目次>

旅立ち

西へ

都城にて

襲撃

神人の土地へ

テア




宮崎駿

1941年東京都生まれ。アニメーション映画監督。

'63年、学習院大学政治経済学部卒業後、

東映動画(現・東映アニメーション)に入社。

劇場用映画「太陽の王子 ホルスの大冒険」('68)の

場面設計・原画などを手がけた後、

Aプロダクションに移籍、劇場用中編

「パンダコパンダ」シリーズ('72、'73)の

原案・脚本・場面設定・原画を担当。

その後、ズイヨー映像、日本アニメーション、

テレコム・アニメーションフィルムを経て、

'85年にスタジオジブリの設立に参加。


主な作品として

TV「未来少年コナン」('78)、

劇場用長編映画としては

「ルパン三世 カリオストロの城」('79)をはじめ、

「風の谷のナウシカ」('84)、

「天空の城ラピュタ」('86)、

「となりのトトロ」('88)、

「魔女の宅急便」('89)、

「紅の豚」('92)、

「もののけ姫」('97)、

「千と千尋の神隠し」('01)、

「ハウルの動く城」('04)、

「崖の上のポニョ」('08)、

「風立ちぬ」('13)などを監督。


著書に『シュナの旅』『出発点』『折り返し点』

『本へのとびら』などがある。

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