リトリート――日本人のための「新疎開」のすすめ / 著者・山本竜隆 / 旬報社
生きる活動へ
小さい頃からよく外で遊んでいた。公園に行って帰ってきてお昼を食べてお昼寝をしてそこからまた公園に行く、そんな毎日のルーティーンに付き合ってくれた父と母には感謝してもしきれない。今自分が親になってみるとそれがとても大変なことだったということを身に染みて実感しているからだ。
小学校に上がってもランドセルを家に置いたら一目散に友達と公園に行ったり、校庭にサッカーボールを持って遊びに行っていた。中高もサッカーに勤しみ、家の中で過ごすことは雨の時以外は殆どなかったように思える。
だからといって、自然との繋がりが強いかと言われれば、そうではない。そこらに生えている雑草の種類だって、梅干しをどうやって作るのかとか、切り干し大根だって今の方がずっと知っている。木は都内でも生えているけれど、それをどうやったら効率よく燃料として活用できるのかということに興味すら覚えなかった。
そうなのだ、私たちの多くは自然とそこにあるものをどう活用していくかといった観点で、自然を通しての生きる活動をどのようにしていくべきかということを現在問われているのでは無いだろうか。
こうした問いに対して一つの入り口としての視点を得ることができるのが、本書『リトリート――日本人のための「新疎開」のすすめ』だ。今、都市生活者にとって、心身をリセットする場所・行為としての「リトリート(Retreat)」が注目を集めている。
富士山麓で長年地域医療に取り組み、リトリート施設を運営する著者の山本さんは、田舎とつながり自然と関わることで現代人が見失いがちな「自分軸」を取り戻す営みがリトリートであり、さらにそれは戦争や食料危機の時代における「避難所」としての機能も果たすと指摘する。
今、なぜリトリートが求められるのか。
私たちはどうリトリートを活用し、それを実現していけばいいのか。
不安な現代社会を生き抜くためのライフスキルを指南。
ぜひこれからの生き方のヒントに。
<目次>
1 なぜいまリトリートなのか
2 リトリートと自然の関係
3 自分軸を失ってしまった現代人
4 「自分自給率」を高める
5 リトリートを実現するための7カ条
6 リトリートの未来を考える
山本竜隆
医師。医学博士。1966年生まれ。聖マリアンナ医科大学卒業、昭和大学大学院医学研究科修了。米国アリゾナ大学医学部統合医療プログラムAssociate Fellowをアジア人で初めて修了。現在は富士山麓に朝霧高原診療所を開設して地域医療にあたるとともに、滞在型リトリート施設「日月倶楽部」「富士山靜養園」も運営。昭和大学医学部客員教授、日本統合医療学会理事、日本ホリスティック医学協会理事なども務める。著書に『自然欠乏症候群』『「オプティマムヘルス」のつくり方』(ワニブックス)『癒しの心得』(旬報社)など。

