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旅立つ理由

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旅立つ理由 / 著者・旦敬介 / 岩波書店



初めて旅に出る気持ちで



何度も北欧の国々に旅にでました。正確に回数は数えていないけれど、きっと25回は悠に超えているかと思います。だから、回数を重ねれば重ねるほど北欧の国の空港に到着しても異国に来た感覚はなく、せいぜい東京から地方都市への出張くらいの心持ちが続いていました。そんなある時、ふと思い立ちポーランド航空を使って北欧に行くついでに、ポーランドの首都ワルシャワに一泊してみようと思い立ちました。ポーランドのショパン空港に降り立ち市内までの電車の切符を買う際に、案内板の文字が普段目にする北欧各国の言葉の並びとも英語とも異なる状況だったので少しの困惑を抱えつつも電車とバスを乗り継ぎなんとか市内へ。東洋人が珍しいのか、それとも大きな荷物を抱えている旅人が邪魔だったのかわかりませんが、周りからの視線がグサリグサリと刺しこまれているのはわかりました。異国を旅するってこういうことだったなと、久しく感じることのなかった異国感を肌で感じた経験だったのでした。


さて、本書『旅立つ理由』はスペイン・ラテンアメリカ文学の翻訳者としても知られる旦敬介さんがアフリカや南米を旅した時の内容をもとにまとめられた短編エッセイ小説です。ご自身の経験をベースにしているとは思いますが、アフリカや南米の,そのさらなる辺境に暮らす人びとの生き生きとした表情が事細かに描写されているので、読んでいるこちらが初めての地に降り立った時の感覚を呼び起こしてくれるのです。

人はなぜ旅をするのか、なぜ旅立つことを強制されるのかを問う、21の短篇。主人公以外は日本人がほとんど登場しない、異色の日本文学をぜひ堪能してみてください。



旦敬介

1959年生まれ.作家,翻訳家,ラテンアメリカ文学研究者.明治大学国際日本学部教員.1982年にペルーとボリビアに旅して以来,メキシコ,スペイン,ブラジル,ケニア,日本などに暮らしながら文章を書いてきた.著書に,『逃亡篇』(日本放送出版協会,1993),『ようこそ,奴隷航路へ』(新潮社,1994),『ライティング・マシーン――ウィリアム・S・バロウズ』(インスクリプト,2010)など.訳書に,M.バルガス=リョサ『世界終末戦争』(新潮社,1988),G.ガルシア=マルケス『十二の遍歴の物語』(新潮社,1994),同『生きて,語り伝える』(新潮社,2009),フアン・ゴイティソーロ『戦いの後の光景』(みすず書房,1996),J.L.ボルヘス『無限の言語』(国書刊行会,2001),パウロ・コエーリョ『11分間』(角川書店,2004.角川文庫,2006)などがある.

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