フィリップ・ワイズベッカーの郷土玩具十二支めぐり / 著者・フィリップ・ワイズベッカー / 青幻舎
本書はフランス・パリを拠点とするアーティスト『フィリップ・ワイズベッカー』が干支にまつわる郷土玩具のつくり手を日本各地十二か所に訪ねた様子を、デッサンとエッセイ、写真で綴った探訪記です。
日本の郷土玩具の工房を海外のアーティスト目線で捉えられたエッセイやその中での気づきなどを読んでいると、この本を手にしている日本人がハッとさせられたり、なるぼど〜と思わされることがとても多いです。今となっては郷土玩具というもの自体にあまり馴染みがないという方の方が多いでしょうから、なおさらそうなのかもしれません。海外の民具などと比べてみても優しい表情が多いということにも改めて気付かされます。
本書の「あとがきにかえて」のところにも書かれていますが、取材先を決める際にワイズベッカーが「自分が描いてみたいもの」「様々な技法のもの」という二つの選択時順で選んでいったそうですが、実際に問い合わせてみると、既に廃業してしまっていたりということも少なくなかったようです。そういったこともあり、海外からの視点でもう一度日本の郷土玩具に解釈がされることはとても良いきっかけになることでしょう。
巻末には実際にフィリップ・ワイズベッカーが旅先で描いたデッサンとメモが収録されているのもとても貴重でそしてリアルです。
<目次>
子―京都・伏見人形の唐辛子ねずみ
丑―福島・会津張り子の赤べこ
寅―東京・ずぼんぼのとら
卯―石川・金沢からくり玩具のもちつき兎
辰―岡山・竹工芸の辰
巳―栃木・きびがら細工のヘビ
午―大分・きじ車の馬
未―宮城・仙台張り子の羊
申―熊本・木の葉猿
酉―宮城・木工創作玩具の酉
戌―福岡・赤坂土人形の戌
亥―奈良・一刀彫りの亥
フィリップ・ワイズベッカー
1942年生まれ。パリとバルセロナを拠点にするアーティスト。広告や展覧会など、日本での活動も多い。
フランス政府のアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ヴィラ九条山」(京都)に4ヶ月滞在し、描きためた大工道具の作品集『HAND TOOLS』や、
これまでの活動の集大成となる『フィリップ・ワイズベッカー作品集 Philippe Weisbecker Works in progress』など多数出版。