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注文の多い注文書

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注文の多い注文書 / 著者小川洋子、クラフト・エヴィング商會 / 筑摩書房

 

時空をつなぐ注文

 

その街区は都会の中の引き出しの奥のようなところにありました。
 
この文章からこの奇妙な小説ははじまります。こちらの本のタイトルは少し既視感がありますよね?(そう、きっと頭に浮かんだのは宮沢賢治著『注文の多い料理店』だと思います。)

けれどこの本はタイトルにもなっている「注文書」が中心に話が進んでいきます。「人体欠視症治療薬」「バナナフィッシュの耳石」「肺に咲く睡蓮」などといったこの世に存在しない探し物を「発注書」として小説家の小川洋子さんが吉田浩美さん・吉田篤弘さんのご夫婦ユニットのクラフト・エヴィング商會に注文し、それをクラフト・エヴィング商會が探し出すという物語です。

小川さん、吉田さんはそれぞれが小説家として活躍されていると思いますが、このありもしない物にまつわる空想の物語同士の掛け合いがなんとも言えず、現実にありもしないのに、あたかもそれがあるのではないのかと思わされてしまうほどです。というのも、各章の最後には「納品書」というかたちで依頼主である小川さん宛の書類がしっかりとまとめられているからです。しかも、写真付きで。
 
そして最後のあとがきで小川さんと吉田さんご夫妻での対談「物と時間と物語」はとても哲学的な話がされていて短い対談ですが何度も読み返したくなるキラーワードがたくさん散りばめられています。
 
少し時間のある時や空想の物語に浸りたい時におすすめの一冊です。

 

<目次>
人体欠視症治療薬
バナナフィッシュの耳石
貧乏な叔母さん
肺に咲く睡蓮
冥途の落丁

 

小川洋子
1962年岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞。著書に『博士の愛した数式』(読売文学賞・本屋大賞)、『ミーナの行進』(谷崎潤一郎賞)、『ことり』(芸術選奨文科大臣賞)など。また聞き手の名手でもあり、その共著もある。

 

クラフト・エヴィング商會
吉田篤弘と吉田浩美による制作ユニット。テキストとイメージを組み合わせた、独創的な作品を多数発表している。『稲垣足穂全集』『らくだこぶ書房21世紀古書目録』で講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞。『どこかにいってしまったものたち』、『クラウド・コレクター』、『じつは、わたくしこういうものです』など。また吉田篤弘の著作として『つむじ風食堂の夜』など、吉田浩美の著作として『a piece of cake』がある。

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