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中庭のオレンジ

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中庭のオレンジ / 著者・吉田篤弘 / 中央公論新社


答えのない物語の世界へ。


本書はタイトルにもある『中庭のオレンジ』というショートストーリーからスタートします。内容は、ある争いの続く架空の街の図書館の本を中庭のあるところに埋めるところから始まり、その場所で占領区の売れ残ったオレンジを食べ、種をその本を埋めた場所に捨てたら、オレンジの木が生えて、埋めた本たちから養分を取り、世界中の物語の実をつけていくという、なんともファンタジー溢れる物語として展開していきます。


著者の吉田篤弘さんの綴るショートストーリーを21話まとめたこの『中庭のオレンジ』はそんな物語のオレンジの実を一つずつ味わっているような物語が収録されています。他の吉田さんの長編もエッセイ以外のほとんどの作品は、架空の話なのですが、どこか自分が目にしたり経験したことのある日本の馴染みのある場所や土地、人物の名前が散りばめられ、自分たちの日常をちょっとだけ視点を変えたような物語が多いのですが、今回のショートストーリーは、本当に架空の場所や名前、そして現実世界ではあり得ない少しSF的な内容になっています。それはまるで小さい頃に図書館などで読んでていた絵本の中の世界のような感覚です。


本書のあとがきには、物語の内容に答え、つまり結論を求めないということについて吉田さんの考えがまとめられています。
確かに小さい頃読んだ物語を考えてみると、本には収まりきっていない大きなストーリーのうちの断片だけが本の中の物語としてまとめられているので、それが何を意味しているのかという深いところまで理解できるようにまとめられてはいませんでした。逆にいうと物語のはじまりと終わりは読み手の想像力に委ねられていたのでしょう。そういった余白も含めて、本の中の物語に心躍らせ、単純に楽しんだり、悲しんだり、じんわりしたりできたものです。


今回のこの『中庭のオレンジ』はこういった答えのない物語の世界を通して、そんな童心の頃、物語に触れた時の感覚を堪能できる一冊です。

夜、一話一話読み進めていくと、きっと面白そうな夢を見られそうな、そんな気がしてきます。


<目次>
やすらぎのひとときに、心にあかりを灯す21話の物語。
◇オオカミの先生の〈ヴァンパイア〉退治
◇五番目のホリーに託されたスープの秘密
◇ギター弾きの少女の恋
◇5391番目の迷える羊
◇予言犬ジェラルドと花を運ぶ舟
◇遠い場所で響き合う夜の合奏
◇天使が見つけた常夜灯のぬくもり ……ほか


 

 

 

吉田篤弘
1962年東京生まれ。小説を執筆するかたわら、「クラフト・エヴィング商會」名義による著作と装幀の仕事を続けている。『つむじ風食堂の夜』『それからはスープのことばかり考えて暮らした』『レインコートを着た犬』『おるもすと』『おやすみ、東京』『天使も怪物も眠る夜』『奇妙な星のおかしな街で』『金曜日の本』『月とコーヒー』『それでも世界は回っている』『屋根裏のチェリー』『物語のあるところ――月舟町ダイアローグ』など多数。