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昔話の扉をひらこう

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昔話の扉をひらこう / 著者・小澤俊夫 / 暮らしの手帖


 

 

声のプレゼント




「ズイズイズッコロバシ、ゴマミソズイ、チャツボニオワレテトッピンシャン」

昔父と童謡遊びとしてやっていた『ずいずいずっころばし』を何気なく息子に謡っていたら、すぐに覚えてその響きの面白さに気づいてしまったのか、ずっと歌い続けている。
けれど「たわらのねずみがこめくって、ちゅう」のところの「たわら」がどうしても「カワラ」と聞こえてしまようで、いつも「カワラ」と言っている。訂正しようものなら、それが逆に面白くなってしまうようでワザと「カワラ」と言って戯けてみせたりするものだから、少し憎らしく愛らしい。自分もそうだった。物心つくまで、いや小学生になるまでずっと「カワラ」だと思っていたのだから息子がそう聞こえてしまうことも納得なのだ。
そんなもんで、どういうわけだか、昔から歌の歌詞というものがあまり頭に入ってこない、それよりもメロディーと言葉の音との耳心地が良いかどうかということが、自分にとっての歌の良し悪しのように思うのだった。音の記憶というものはなぜかこころの奥底で響き続けているようで、年に一回、夏に信州・上田の祖父母の家に滞在した時に必ず寝る前に祖母に添い寝をしてもらいながら聞かせてもらった昔話は話の内容は記憶が薄れているのだが、未だにその語り口なども含めて何か自分の中に残っているのだった。


さて、本書『昔話の扉をひらこう』は、そんな昔話の不思議さについて口承文芸学者の小澤俊夫さんが丁寧に解き明かしてくれている一冊です。わたしたちの祖先が何世代も語りついできた昔話には、人生観、自然観、子育てのヒントが染み込んでいます。あたたかいまなざしで人生の本質を語り、「大丈夫だよ」と励ましてくれるのです。そんな昔話に秘められる大切なことを紐解く内容になっています。


父と遊んだ『ずいずいずっころばし』が自分へ、そして自分から息子へと声のプレゼントが世代を超えて受け継がれていることに不思議な安堵感を覚えたのは、童謡と昔話で分野は異なれど、音の伝承という点では同じなのだとこの一冊を読んで妙に納得するのでした。


お子さんがいらっしゃる方には特にオススメの一冊です。



<目次>

1の扉 子どもに昔話を

2の扉 昔話と動物

3の扉 昔話が伝えるメッセージ

4の扉 声と言葉

5の扉 語りの秘密

6の扉 暮らしに昔話を

小さなお話集1 日本の昔話

小さなお話集2 グリム童話

昔話の本のご案内

親子鼎談・二人の息子と語る 子どもとことば―小澤俊夫×小澤淳(長男)×小沢健二(次男)



小澤俊夫
1930年中国長春生まれ。口承文芸学者。小澤昔ばなし研究所所長。筑波大学名誉教授。ドイツ・マールブルク大学客員教授、国際口承文芸学会副会長及び日本口承文芸学会会長を歴任。グリム童話の研究から出発し、マックス・リュティの口承文芸理論を日本に紹介する。その後、昔話全般の研究を進めている。1992年より全国各地で「昔ばなし大学」を開講、昔話の魅力を広く伝える。2007年ドイツ・ヴァルター・カーン財団のヨーロッパ・メルヒェン賞、2011年ドイツ・ヘッセン州文化交流功労賞、2020年日本児童文芸家協会の児童文化功労賞受賞

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