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新月の子どもたち

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新月の子どもたち / 著者・斉藤倫、画・花松あゆみ / ブロンズ新社



子どもの頃見た風景へ



本書は詩人の斉藤倫さんによる書き下ろしの長編物語です。

なぎ町小学校の5年生になる平居令と彼が夢で見た架空の街トロイガルトの独房に暮らすレインの二人の少年の夢と現実が行ったり来たりしながら一章ごとに交差していく物語なのですが、最初の章を読み始めた時は唐突に独房の中からスタートしたので、この先の物語の展開がどうなっていくのだろうと思っていましたが、読み進めていくうちに、物語の輪郭や構造がパッとひらけ、徐々にシンクロしていく感じが感覚的に面白い一冊です。


小学生なので理科室などの学校の描写が出てきますが、字面を追いながらイメージとして浮かび上がってくるのは、自分が通っていた小学校の風景でした。きっと読む方によってイメージされる風景は異なってくるかと思いますが、浮かび上がってくるものはきっとあなたの幼少期の頃の風景に違いないです。

文章と文章の間や文字と文字の句読点などの位置が絶妙でそこから漂ってくる空気感や世界観を感じる一冊で、さすが詩人の斉藤さん!といった感じですが、確かに小学生くらいの子どもの頃は現実の世界と夢、または妄想の中のもう一つの世界を持っていたということを思い出させてくれます。


あのもう一つの世界はどこに行ってしまったのだろうか。

あの頃感じていたモヤっとしていたことはどこに消えていったのだろうか。

そんなことをぼんやりと考えたくなるような一冊です。

漢字にはルビが振ってあるので読書に馴染みのない方、小学校高学年ころの方たちにも手に取ってもらいやすい一冊です。



斉藤倫
だれもがみんなそこにいたのに、おとなになると忘れてしまう「国」があります。
そんな〈トロイガルト〉の旅は、つらくて、苦しくて、二度ともどりたくないくらい。
でも、いつか、ほんとうに困ったときには、そこにいたみんなが、きっとたすけてくれるような、たいせつなばしょ。そんなお話を書きました。すごく長い時間がかかったので、世の中は、ずいぶんかわってしまいましたが、それでも、なにもかわらないようなことを書いています。ぜひ、みなさんも、レインたちといっしょに旅をしてみてください。

<プロフィール>
詩人。『どろぼうのどろぼん』(福音館書店)で、第48回日本児童文学者協会新人賞、第64回小学館児童出版文化賞を受賞。主な作品に『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』『さいごのゆうれい』。絵本に『とうだい』(絵・小池アミイゴ/以上、福音館書店)、うきまるとの共作で『はるとあき』(絵・吉田尚令/小学館)。『のせのせ せーの!』(絵・くのまり/ブロンズ新社)などがある。



花松あゆみ
この物語の、少し怖くて鮮明な夢の世界と、モヤがかかったような現実の世界を、主人公の令くんの後ろで一緒に見ているような気持ちで絵を描きました。自分が何が好きか、何が嬉しいのか、本当はどうしたいのか。見えなくなってしまった自分の本当の声を、夢と現実とを行き来しながら見つけ出そうとする令くんたちの旅は、自分にとって大切なことは何かを思い出させてくれます。姿は見えなくても、そこにある。新月のように。これから自分の足で歩きはじめるたくさんの子どもたち、大人たちにも読んでもらいたい物語です。

<プロフィール>
イラストレーター。日本大学芸術学部デザイン学科卒、パレットクラブイラストBコース11期卒。ゴム版画によるイラストレーションで書籍装画、雑誌の挿絵を中心に活躍している。『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(朝日出版社)や『月のこよみ』(誠文堂新光社)の装画など、書籍や雑誌等の装画、挿絵など多数ある。

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