ナショナル・ストーリー・プロジェクト / 著者・ポール オースター / 新潮社
日常という名の物語
小中高生時代、学校に行っていない時はテレビばかり見ていました。特にテレビドラマ。
時間が被って放送されているものは全てVHSで録画して後から見返すということを飽きもせずにずっと繰り返していたのです。なので1990年代後半辺りから2000年代中盤あたりまでのドラマはほぼ網羅しているといっていいほどです。
けれど大学生になり旅にで始めた頃から、それまで見入っていたテレビドラマに全くといっいいほど関心が向かなくなったのです。というのも『あれ、これはドラマよりドラマチックなんじゃないか』そう海外に自分の足で出て、たった1人での小さな冒険の歩みを進めると感じてしまうのは、今考えれば不思議なことではありません。今ではテレビすら家にはなく、自分の日常を楽しんでいます。
さて本書『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』はアメリカの小説家として知られるポール オースターが自身のラジオ番組で全米から募った「普通の」人々の、ちょっと「普通でない」実話たちを精選しまとめられた一冊です。
世間では大きいニュースばかりが報じられていますが、私たちの身の回りのことは、そのほとんどがとても小さなことが集まって成り立っています。この一冊、いや本書に収録されている一つずつのエピソードがそんなことを物語ってくれているはずです。
自分の日常を改めて考えてみるきっかけになる一冊です。
<Ⅰ 目次>
動物(鶏;ラスカル ほか)
物(星と鎖;ラジオ・ジプシー ほか)
家族(雨天中止;隔離 ほか)
スラップティック(大陸の両岸で;フェルトの中折れ帽 ほか)
見知らぬ隣人(七十四丁目のダンス―一九六二年八月、マンハッタン;ビルとの会話 ほか)
<Ⅱ 目次>
見知らぬ隣人(承前)(ブルックリン・ロバーツ;二人部屋、一泊一三八〇ドル也 ほか)
戦争(北軍一の俊足;一八六二年のクリスマス ほか)
愛(もしも;トルテリーニの神秘 ほか)
死(遺灰;ハリスバーグ ほか)
夢(午前四時五分;深夜の出来事 ほか)
瞑想(裁縫レッスン;日曜日のドライブ ほか)
オースター ポール
1947年生れ。コロンビア大学卒業後、数年間各国を放浪する。’70年代は主として詩や評論、翻訳に創作意欲を注いできたが、’85年から’86年にかけて、『シティ・オヴ・グラス』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』の、いわゆる「ニューヨーク三部作」を発表し、一躍現代アメリカ文学の旗手として脚光を浴びた。