MY MUSEUM / Joanne Liu / PRESTEL
あの頃の気持ちのままで
幼少期、美術館へ訪れたときのことを憶えていますか?
芸術作品を観て、子ども心ながらにも感動することもあったでしょうが、それよりも、おしゃべりやかけっこができない”屈さ、大勢の知らないひとにソワソワしたり、険しい顔っきした監視員や警備員のほうがよほど印象に残っていたりして。そうした環境下でも、おもしろいものを見つける才能にかけては、子どもたちのやわらかい感性に勝るものはなさそうです。
そうした大切なことを教えてくれる、シンプルでありながら巧みで奥深い一冊をご紹介します。
主人公のマックスくんは、彼なりの目線で、美術館のなかに広がる光景をたっぷり味わっています。ベンチに腰掛けて試しに逆さまに館内を覗き込んでみたり、自分の影で遊んだり、用務員と友だちになったり。
しかめ面で作品と対する鑑賞者の表情のほうが、よっぽど興味深く映る。窓に映る景色だって、印象派の風景画がはらむうつくしさに劣らない。その視点さえ持ちあわせていれば、たとえ美術館の外であったとしても、目の前に広がる景色はみな、すばらしい芸術なのだと気づくことができることでしょう。
text by Takiko Nishiki
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Joanne Liu
香港在住のイラストレーター。前作『My Museum』(Prestel)で2018年ボローニャ・ラガッツィ・ブック・アワードの特別賞を受賞。