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いのちの記憶―銀河を渡るⅡ

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いのちの記憶―銀河を渡るⅡ / 著者・沢木耕太郎 / 新潮社




一筋の光明




世の中には適切なタイミングで適切な言葉をかけられる人がいる。自分はなんでも卒なくこなせる方だと思うけれど、こういった部分はからきしダメ。不器用なのだ。せめてもの言い訳をさせてもらうと、このタイミングというのはなんとなくわかる。けれど最後の一言を出す勇気が少し足りていないのだと思う。

きっとその勇気というのは他人との関係性や距離感に付随するものなのだろう。こころの中にある人見知りが発動して何となく自分がこの言葉を発さなくても良いかなと思ってしまい、最後の一手に怖気付く。きっと誰それ構わず話かけることのできる息子の方が大きくなった時に、そうした適切な言葉を適切なタイミングでかけられるようになる気がするのだ。


さて、どうしてこんなことを言っているのかというと、本書『いのちの記憶―銀河を渡るⅡ』の著書・沢木耕太郎さんはきっとそういう言葉をかけられる人だなと本書を読んでいて感じたからだ。旅人でもある沢木さんは旅の中でそうした声がけができるようになったのか、はたまた幼い頃からそうした特性を持ち合わせていたのか定かではないけれど、本書に収められているエッセイの端々にここぞというタイミングで相手に声を、言葉を投げかけているのが見て取れるのだ。その言葉を受け取った相手はきっと視界が開かれるようなそんな一筋の光をその声や言葉を通して感じ取っているはずだ。エッセイを読み進めていると、そうした小さな光、けれどきっとそれは大きな光を見ることができるだろう。それは旅に向かう期待感にも近しいかもしれない。


少年時代から今日まで好奇心のまま旅をし続けた。

その日々の軌跡を辿るエッセイ集。

こことは別の場所に行き、ここにいる自分とは別の自分になってみたい――。盗賊にさらわれることに憧れていた少年時代、シルクロードを旅する私に父が詠んだ一句、北欧の小さなホテルでの会話から得た教訓、外の世界へと足を向かわせた熱の正体、人生の岐路となった『危機の宰相』、高倉健との偶然の出会いから始まった交流、そして永遠の別れ。忘れがたい無数の日々の追憶。


旅人・沢木耕太郎の日々のエッセイはそうした光を見ることができるのだ。



<目次>

まだ、諦めない

教訓は何もない

あの春の夜の

三枚の記念写真

いのちの記憶

すべてを自分たちの手で

新聞記者になった日

この季節の小さな楽しみ

ありきたりのひとこと

小さな光

四十一人目の盗賊

天邪鬼

スランプってさあ、と少年は言った

地獄の一丁目

「お」のない「もてなし」

秋の果実

傘がある

欲望について


冬のひばり

熱を浴びる

最初の人

ふもとの楽しみ

与えるだけで

極楽とんぼ

美しい人生

深い海の底に

供花として


岐路

完璧な瞬間を求めて

長い影


記憶の海 文庫版のあとがきとして



沢木耕太郎

1947(昭和22)年、東京生れ。横浜国大卒業。

ほどなくルポライターとして出発し、鮮烈な感性と斬新な文体で注目を集める。『若き実力者たち』『敗れざる者たち』等を発表した後、1979年、『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年には『一瞬の夏』で新田次郎文学賞を受賞。常にノンフィクションの新たな可能性を追求し続け、1995(平成7)年、檀一雄未亡人の一人称話法に徹した『檀』を発表。

2000年に初めての書き下ろし長編小説『血の味』を刊行。2002年から2004年にかけて、それまでのノンフィクション分野の仕事の集大成『沢木耕太郎ノンフィクション』が刊行され、2005年にはフィクション/ノンフィクションの垣根を超えたとも言うべき登山の極限状態を描いた『凍』を発表、大きな話題を呼んだ。

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