mahora 第5号 / 編集・発行人・岡澤浩太郎 / 八燿堂
見えないものの、その先へ。
『mahora』は太古の自然や秘跡、現代の日常や暮らし、宇宙の営為や人間の手仕事などあらゆる生命の豊かさや美しさ、時代に寄らない本質的なあり方をホリスティックな観点で集め、祝福する、八燿堂の精神的な基幹となる刊行物です。
毎号深い洞察と気づきを与えてくれる『mahora』ですが、第5号は第2号でも寄稿いただいた音楽家・青葉市子さんへのロングインタビューをはじめ、DEPT社代表であり気候変動に対するアクティビストでもあるeriさんへのインタビュー、音楽が生まれる瞬間を綴った、音楽家・文筆家の寺尾紗穂さんの書き下ろしエッセイ、日本人唯一のチベット医・小川康さんによる薬草「ムラサキ」についての談話、大分在住の写真家・野口優子さんによるフォトストーリーなどが編纂されています。
特に興味を惹かれたのが、発行人でもある岡澤さんのコラム『ヲシテと神代文字』でした。学術的には認められないけれど存在はしている神代文字などの古代文字について取材されている様子をコラムでまとめられているのですが、読んでいるこちらも取材に同行し、その神秘に満ち溢れた『文字』の世界に酔いしれることができます。
1冊全体を通していえることが、見えないもの、触れられないものの想像力が我々人間を動かす原動力、源になっているのだということ。そしてまだ見ぬ世界に想像し共感することが、個という意識から解放され全てベクトルの等しい命の世界に一歩踏み出すきっかけになるのでしょう。
音楽家の青葉市子さんへのインタビューで岡澤さんは『mahora』は200年後の人に発見されたいという思いで作っていると話をしています。きっと200年後にこの本を手にした人たちも、「なんだ昔の人たちもちゃんと分かっていたんじゃないか」と思ってくれるのではないのでしょうか。
カバーは黄土でつくられた天然顔料をシルク印刷で、毎号お馴染みの本への結びは小豆色の紐で「あわび結び」と呼ばれる結び方施されています。
表紙にはコラムでフォーカスされている『ヲシテ文字』が書かれています。
<目次>
ほどけて、かえる
青葉市子=インタビュー
empathyを、誰かへ
eri=インタビュー
夢の綻び
野口優子=写真
伝えなければ
寺尾紗穂=文
“ロストプランツ”――ムラサキと薬草
小川康=談
ヲシテと神代文字
岡澤浩太郎=取材・文
[連載]Memoriae
第二回 パンデミックとTGDCと生きるということ
ジョアンナ・タガダ・ホフベック=文・アートワーク
金沢みなみ=翻訳・編集協力
[連載]食と芸術をめぐるノート
第五回「山になる」「私は我々に食べられる」
石倉敏明=文
[今号の結び]あわび結び(別名:葵結び・淡路結び)
関根みゆき=文
編集後記
寄稿者プロフィール
mahora
「mahora(まほら)」とは、美しい場所、すぐれた場所を意味する古語。
こう言うと、どこか遠くの理想郷のように感じるかもしれません。
けれども実は、私たちが日々暮らし、生活する場所に、“美” はすでに、散りばめられているのだと、思います。
毎朝の食事、家の小さな仕事、その日に着る服、庭や窓辺の草花、部屋にたたずむ絵や置物、テーブルの上の誰かの手仕事、親しい人との会話、四季の風景、風の鳴る音、鳥の声――
これらを “美しい” と思う気持ちは、きっと、ずっとずっと遠い昔から繰り返され、やがてまだ見ぬ誰かも、繰り返していくのでしょう。
言葉を換えれば、人は美を感じる時、近くにいる、そして遠くにいる、誰かや何かと、そっとつながることが、できるのです。
『mahora』は、美術や服飾、工芸や手仕事、伝統文化や民俗学、自然の風土や農や土、太古の知恵や日々の暮らし、といった広い領域を、“美” というあり方を通して、横断し、つなぎ、見渡していきます。
この本に散りばめられた “美” が、自然や時の流れと結ばれる、ささやかな扉になることを、願います。
八燿堂
2018年に活動を開始、2019年11月に東京から長野県小海町にある小さな集落に移住しました。大量生産・大量消費・大量廃棄の現在の出版業界の構造とは異なる、少部数・直接取引の形態をとりながら、文化的・環境的・地域経済的に持続可能な出版活動を模索しています。
<八燿堂出版物>
・mahora 第2号
・mahora 第3号
・mahora 第4号
・農民芸術概論
・アマゾンの民具