アマゾンの民具 / 著者・山口吉彦、写真・山本康平 / 八燿堂
アマゾンの民具と聞いてまずイメージしたのは、彩豊かな鳥の羽を使った頭飾りでした。この本のページをめくるとこういった鮮やかなアイテムはもちろんのこと、どこか日本のこけしを思い出すような人形などの数多くのアマゾンの民具が掲載されていることに驚きと不思議な懐かしさを思い出すことでしょう。
本書は、文化人類学研究者の山口吉彦さんが1970年代より南米アマゾンのジャングル奥深くに住む先住民たちと関係性を結び収集した調度品や祝祭などに使われるアマゾンの民具の2万点超のコレクションから厳選したものを、写真家の山本康平さんが撮影し、写真によってビジュアルメインでまとめ紹介しています。
収録されている写真をしっかりと眺めてみると、ほとんどの民具が自然のものを使い、アクセサリーなどは動物のカラダの一部を使っていることがわかり、同時に素材となっている自然物や生命の多様さもおのずと感じられることでしょう。モノや情報が溢れている現代社会でも、こんなにも色鮮やかな羽を集めることは容易ではありません。
これらの源泉は全て『動く海』とも形容できるアマゾン川流域の豊かな自然であり、森、川、木、石など全てのものに霊性があると考え生活するアマゾンの多種多様な生命の営みが民具というものに凝縮されているのだなと本書の巻末に書き下ろされている著者の山口吉彦さんの『共生の遺産』を読んでいて感じられます。
自然と人間とのバランスが崩れ、自然との共生や調和を考え始めた現代社会の今だからこそ、本質的な生命の営みを改めて民具から考えてみるきっかけにしてみてほしいです。
この本は、”地球の歩みの証”としての一冊なのだと思いました。
<目次>
刊行に寄せて
1 装う
2 営む
共生の遺産 文=山口吉彦
山口吉彦 (文)
1942年生まれ、文化人類学研究者。67年頃からフィールドワークを始め、71年からアマゾン流域の調査を開始。これまでアジア、アフリカなど85ヶ国を回る。帰国後、山形県鶴岡市でアマゾン民族館(2014年閉館)の館長を務めながら国際理解・交流の促進に尽力。監修した本に『共生の大地 アマゾンに生きる人々』(太平印刷)。amazon-resources.org
山本康平(写真)
京都府宇治市生まれ。京都工芸繊維大学卒業後、都内スタジオ勤務を経てフォトグラファーとして独立。広告、雑誌、ウェブ、ブランディングやプロジェクトなどにおいて、ジャンルにとらわれないさまざまな撮影を行う。