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マグリット400

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マグリット400 / 著者・ジュリー・ワセージュ / 青幻舎



超現実の世界




大学4年生はほとんど海外と日本を行き来していました。その当時からPCを持ち込み旅先のカフェで卒業論文を書き、日本に帰国すればゼミの授業だけ出席し、残りはアルバイトで関東近郊を転々としながら旅していました。そんな中、初めての飛行機の乗り換えを経験したのがベルギーの首都ブリュッセルに行く時でした。経験がなかったので預けた荷物は経由地のヘルシンキでピックアップするべきなのかという、今考えればただの杞憂を抱えながら少し冒険のような、いや不安の方が優っていた旅路だったように思い起こされます。

到着しても現地の治安がそれ以前に行っていた北欧諸国と比較した時に悪かったり、何やら旅先の日常を過ごしていてもずっとソワソワしていたように思います。ただこの旅ではベルギーワッフルや、チョコレート、ムール貝のワイン蒸し、それにウサギといったいわゆる現地の名物料理をよく食べました。ずっとソワソワしていたので、こうした料理もより一層こころにも染み渡りベルギーに行った記憶のほとんどは食に占められているのです。

さて、そんな中でも唯一記憶に鮮明に残っているのが、シュルレアリズムの巨匠として知られるルネ・マグリットの美術館・『マグリット美術館』です。現実でありそうなモチーフと絶対にこの組み合わせはないであろうというという、現実を超えたアート表現の数々に今までそうした世界を見たことなかった自分にとってかなり衝撃を受けたものでした。中でも『光の帝国』とタイトルのついた絵画は昼の景色と夜の景色が混在した不思議な世界を表現しているにも関わらず、何だかどこかで見たことあるような懐かしさも感じられました。気づけば2、3時間は美術館の中を彷徨い鑑賞し続けていて、後にも先にもこんなに美術館に滞在することはないと思っています。そして、そんな超現実を目の当たりにした後は、旅の中で感じていた不安やソワソワはすっかりと晴れたのでした。



さて、本書『マグリット400』は、20世紀ベルギーを代表するアーティストとして称えられる、シュルレアリスムの巨匠ルネ・マグリットの日本では初掲載となる作品を多数含む、現実・常識・概念を解き放つ厳選の作品をオールカラーで紹介した作品集です。

悪童として名を馳せた幼少期、母の自殺、初恋である妻・ジョルジェットとの出会い、未来派とキュビズムに明け暮れた学生時代、シュルレアリズムの結実、印象派や野獣派を求めた知られざる不遇の時代、規則正しく描き続け自らの作風の深化に向き合った最晩年……。


誰のものでもあり得るような平凡な人生を送った画家は、誰のものともつかない特徴のないスタイルで描きながらも、我々を魅了してやまない強烈な個性を放つ作品を生涯で多く残しました。言葉、観念、イメージと向き合い続けたマグリットの作家人生をかけた試みを、厳選400点という前代未聞の規模でたどります。


著者は、マグリット美術館に在籍した経歴をもち、ルネ・マグリットを専門としてプロジェクトを複数担当する新進気鋭のキュレーター・美術史家です。掲載作品は、研究者の視点で生涯作約1,700点のなかから丹念にセレクトされ、マグリットの故郷ベルギーの版元とのコラボレーションにより本書が実現しました。かつてみたことのない壮大な規模で作家人生を追う、美術ファン必見の一冊です。


超現実を是非目の当たりにしてみてください。




<目次>

1919-1925年 抽象画、シュルレアリストになるまでの試み

1926-1930年 暗黒時代

1927-1930年 言葉とイメージ

1931-1942年 選択的親和性

1943-1947年 陽光のシュルレアリスム

1948年 「牝牛(ヴァッシュ)」の時代

1947-1967年 日常の中の詩




ジュリー・ワセージュ
美術史家、キュレーター。ブリュッセル自由大学で美術史を専攻し、2012年に卒業。201316年、コラボレーターとしてブリュッセルのマグリット美術館に在籍。ルネ・マグリットに関する複数のプロジェクトを担当する独立した研究者として貢献している。

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