※こちらの商品は9月19日(金)より販売開始となります。
MAEGHT UNIVERSE / 作者・アイメ・マーグ(Aimé Maeght)、マルグリット・マーグ(Marguerite Maeght) / LA FÁBRICA
放射状の関係性
FacebookにinstagramなどのSNSが発展していっている昨今。デジタルとリアルの関係性に乖離が生まれているような気がしてならない。デジタル上は繋がっていても実際には会ったこともないし声も聞いたこともない。そんな関係性の一つや二つ心当たりがある方も多いはずだ。
でも思い返してみれば10年以上前であればそんなことはほとんどなかったはずだ。携帯電話はあったとしてもそれはリアルな関係性を補完するツールであって、ベースとなるのはリアルな関係性。今考えると実際に会うという行為を前提とした社会が組み上がっていたので手間暇はかかっていたはずだけれど、それなりに人間味のあるものだったなと振り返ることができる。
さて、本書『MAEGHT UNIVERSE』はそんなリアルな関係性を可視化したような一冊になっている。内容は、スペイン人彫刻家、エドゥアルド・チリーダ(Eduardo Chillida)と同時代のアーティストたちを紹介する作品集なのだが、この同時代のアーティストというのが凄い。アレクサンダー・コールダー(Alexander Calder)、アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)、パブロ・パラスエロ(Pablo Palazuelo)、ジョルジュ・ブラック(Georges Braque)、フリオ・ゴンサレス(Julio González)、ジャン・アルプ(Jean Arp)、バーバラ・ヘップワース(Barbara Hepworth)、アントニ・タピエス(Antoni Tàpies)、ジョアン・ミロ(Joan Miró)、マルク・シャガール(Marc Chagall)といった面々が並ぶ。
というのも歴史的に重要とされるディーラーであり、世界で最も重要な彫刻作品コレクションを数多く有する「マーグ財団(Fondation Maeght)」を設立したアイメ・マーグ(Aimé Maeght)とその妻マルグリット・マーグ(Marguerite Maeght)が本書のベースとなった展覧会を企画したのだが、この夫妻は20世紀を通じて彫刻という芸術の進化を促し、唯一無二でありしばしば物議を醸すほどのヴィジョンを持つモダニズムの芸術家たちを支持したことでアーティストたちからの信頼を得ていたのだ。
本書のタイトル通り、放射状に広がる“MAEGHTの宇宙(UNIVERSE)”を可視化したようなものなのだ。
読み終える頃に、今のSNS時代に本書のような企画が成立するのかとふと疑問が浮かんだ。そういう意味でも、20世紀という物質とリアルの間で動いて社会の産物としての一冊なのかもしれないと感じられるのだ。
※ポッドキャスト『面影飛行』では、さらに詳しくこちらのアートブックについて語っています。あわせてお楽しみください!
hardcover
112 pages
170 x 245 mm
color
2024