自然をこんなふうに見てごらん 宮澤賢治のことば / 著者・澤口たまみ / 山と渓谷社
意味を見出す心象スケッチ
銀河鉄道の夜、注文の多い料理店など数々の名作を残している宮沢賢治。宮沢賢治のファンという方ではない方にとっては、学校の教科書で勉強したなとかなんとなくの記憶の片隅にある程度なのだろうと思います。斯くいう私もその一人なのです。
本書『自然をこんなふうに見てごらん 宮澤賢治のことば 』はエッセイストで絵本作家、そして宮沢賢治と同郷の澤口たまみさんが宮沢賢治の作品の中から自然にまつわる描写をキュレーションしてまとめている一冊です。取り上げた詩や物語の一節に対して、澤口さんのエッセイが一つ掲載されているスタイルなのでとても読みやすく、宮沢賢治の自然描写に対する解釈が、それこそとても自然ですんなりと共感できることでしょう。
宮沢賢治の言葉と澤口さんのエッセイを読んでみると、あることが当たり前になっている自然の美しさだけでなく、一見自分にとっては無意味と感じていることも見方を変えれば意味が見えてくる、全てはそれに対峙している自分のこころの状態次第なのだなとつくづく感じさせられます。
日々忙しなく働いていらっしゃるそこのあなた。
一息入れてこの一冊をめくってみると、世界がちょっと豊かに見えるはずです。
<目次>
プロローグ 宮澤賢治が教え子たちに伝えたこと
パート一 立ち止まってみる そばにある感動を見つける
パート二 感動するこころと向き合って 発見を言葉にする
パート三 新たな発見に出会う 視野を広げて
パート四 つまらないものはない 先入観を捨ててみる
パート五 暮らしとともにある自然 よりよく自然とつき合う
パート六 自然を見つめるこころ 幸せを願う
エピローグ 宮澤賢治が遺した、もうひとつの思い
澤口たまみ
エッセイスト・絵本作家。1960年、岩手県盛岡市生まれ。1990年『虫のつぶやき聞こえたよ』(白水社)で日本エッセイストクラブ賞。2017年『わたしのこねこ』(絵・あずみ虫、福音館書店)で産経児童出版文化賞美術賞を受ける。かがく絵本のテキストを書き、宮澤賢治の後輩として作品を読み解く。宮澤賢治は相思相愛の恋を経験しており、その恋を母音で韻を踏む言葉に隠していたと考えている。ヒゲダンスも弾いていたベーシスト石澤由松と、言葉を音楽にのせる「Voice&Music」CDを自主制作する。岩手県紫波町在住。